講演情報

[GP38]労働安全衛生法改正に対応した化学物質管理体制の改善とその有効性

*竹内 かのん1、池上 陽太1、堀内 千明1、佐久間 武史1、白倉 聡1、中尾 知江美1、前島 基志1 (1. 国立研究開発法人 国立成育医療研究センタ-)
【はじめに】労働安全衛生法は, 労働者の安全と健康を確保し, 快適な作業環境を形成する自主的な活動を促進することを目的として制定されている. その根幹には労働災害予防が位置づけられており, 安全管理体制, 作業環境整備, 教育の充実等が義務付けられている. 本法は2023年~2024年に段階的に改正され, 化学物質管理体制の強化が求められた. 今回, 改正法令への対応として当院で実施した化学物質管理体制の改善ついて報告する.
【取り組み】当院検査室では化学物質管理体制強化を目的として, ①化学物質管理者および保護具着用管理者の選任, ②特定化学物質ならびに有機溶剤に関する安全情報の掲示体制を整備, ③保護具着用が義務化されたことを受け専用保護具の導入, ④管理対象物質の増加に伴いリスクアセスメントの見直しと実施時期の明確化, ⑤発がん性物質の作業記録を専用様式に改めた記録保管体制の整備, ⑥検査部内における研修勉強会の開催, 以上6点を実施した.
【改善】管理者を選任したことで責任体制が明確化し, 掲示物の更新や専用保護具の導入などの環境整備は安全性向上に寄与した. リスクアセスメントの見直しにより網羅的なリスクの把握と計画的な管理が可能となった. 発がん性物質の専用記録の導入により, 詳細な作業履歴の保存や閲覧が容易になった. 勉強会の開催を通じ, スタッフの化学物質取扱いに対するリスク認識の向上が期待された. 化学物質管理の手順と記録の整備を法令改正に基づき強化することにより, 記載漏れなどの人為的な誤りを防止する仕組みの構築に寄与した. 法令遵守の徹底により, 検査室における品質保証体制の一層の強化が図られたと考えられる.
【考察】将来的な法改正を見据え, 継続的な情報収集と教育や訓練を実施するとともに定期的なリスクの抽出と評価を行い, 管理体制の持続的な改善及び, 化学物質に関する専門知識を有する資格保持者の人材育成に努めたい.

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