講演情報
[LS3]「広がる医療DXの可能性とリスクに備えるBCP」
*佐藤 寛之1 (1. シスメックス株式会社 ICT営業推進部)
近年、医療を取り巻く環境は急速に変化している。少子高齢化、医療費の増大、働き手不足、地域間格差の拡大などの課題がある中で、医療の持続可能性を確保するために国を挙げた医療DXの推進が進められている。今後「全国医療情報プラットフォーム」の本格運用が控えており、電子カルテ情報や検体検査データ・予防接種・処方・介護情報などの標準化と共有が始まる。これにより、地域や施設を超えたシームレスな情報連携が可能となり、患者中心の医療実現に向けた大きな一歩が踏み出されようとしている。一方で、医療のデジタル化が進むほどシステム障害や災害、サイバー攻撃などによる機能停止リスクも高まり、医療機関におけるBCP(Business Continuity Plan:事業継続計画)の重要性が一層増している。
本セミナーでは、まず医療DXの進展状況と将来像を整理する。電子カルテ情報共有の全国展開や、遠隔診療・検査支援、モバイル診察室など、デジタル技術が医療アクセスを再構築している現状を紹介する。特に臨床検査分野では、データの標準化・相互運用が進むことで、検査情報が地域医療連携の中核データとして活用される機会が増えている。その結果、検査部門には従来の精度保証に加え、データ品質・即時性・セキュリティといった新たな品質マネジメントが求められている。
次に、災害や通信障害時における検査室の事業継続を想定したBCP策定の実際を紹介する。非常時に継続すべき検査項目の選定、分析装置の稼働可否、水・電源・試薬供給などの要件確認、リモート保守体制の整備、データ保全とバックアップ方針など、平時からの具体的な準備が欠かせない。また、地震や感染症などに加え、近年は医療機関を狙ったサイバー攻撃が急増しており、複数の医療機関で診療停止に至る深刻な事例が発生している。これらを踏まえ、医療情報システムの安全管理ガイドライン第6.0版に準拠したセキュリティ強化、利用システムの二要素認証対応、オフラインバックアップなどの「サイバーBCP」の整備が喫緊の課題である。
医療DXとBCPは相反する概念ではなく、むしろ相互補完の関係にある。デジタル化の恩恵を最大化するには、リスクを制御しながら持続的に医療を提供できる体制が不可欠である。臨床検査部門は、データの信頼性確保と業務継続性の両立を担う重要な拠点であり、今後は検査部門がデータ利活用と危機対応の両輪を担う存在として進化することが期待される。
本セミナーでは、まず医療DXの進展状況と将来像を整理する。電子カルテ情報共有の全国展開や、遠隔診療・検査支援、モバイル診察室など、デジタル技術が医療アクセスを再構築している現状を紹介する。特に臨床検査分野では、データの標準化・相互運用が進むことで、検査情報が地域医療連携の中核データとして活用される機会が増えている。その結果、検査部門には従来の精度保証に加え、データ品質・即時性・セキュリティといった新たな品質マネジメントが求められている。
次に、災害や通信障害時における検査室の事業継続を想定したBCP策定の実際を紹介する。非常時に継続すべき検査項目の選定、分析装置の稼働可否、水・電源・試薬供給などの要件確認、リモート保守体制の整備、データ保全とバックアップ方針など、平時からの具体的な準備が欠かせない。また、地震や感染症などに加え、近年は医療機関を狙ったサイバー攻撃が急増しており、複数の医療機関で診療停止に至る深刻な事例が発生している。これらを踏まえ、医療情報システムの安全管理ガイドライン第6.0版に準拠したセキュリティ強化、利用システムの二要素認証対応、オフラインバックアップなどの「サイバーBCP」の整備が喫緊の課題である。
医療DXとBCPは相反する概念ではなく、むしろ相互補完の関係にある。デジタル化の恩恵を最大化するには、リスクを制御しながら持続的に医療を提供できる体制が不可欠である。臨床検査部門は、データの信頼性確保と業務継続性の両立を担う重要な拠点であり、今後は検査部門がデータ利活用と危機対応の両輪を担う存在として進化することが期待される。
