講演情報
[GP43]水疱性類天疱瘡治療中に後天性血友病Aを発症、急激な経過を辿った一例
*村野 胡桃1、佐藤 廣幸1、岡 周作1、谷田部 陽子1、荒井 智子1、甲田 祐也2、涌井 昌俊3、松下 弘道3 (1. 慶應義塾大学病院 臨床検査科 2.慶應義塾大学医学部 血液内科 3.慶應義塾大学医学部 臨床検査医学)
【背景】後天性血友病Aは後天性に第Ⅷ因子に対する自己抗体が出現し、第Ⅷ因子活性が著しく低下することで、重篤な出血症状を呈する難治性の出血性疾患である。本疾患の発生機序はいまだ不明な点が多いが、自己免疫疾患にしばしば合併する。今回、我々は水疱性類天疱瘡治療中に後天性血友病Aを発症後、出血性ショックを来し、急激な経過を辿った一例を経験したので報告する。
【症例】60代、男性。20XX年6月より手指に紅斑と水疱が出現し、次第に全身へ拡大したが自宅にて経過観察されていた。同年7月、他院にて水疱性類天疱瘡と診断され、ステロイド治療が開始された。しかし改善が認められず、19日後に加療目的で当院入院となった。
【臨床経過】当院初診時の採血において、PT 9.0秒、 Hb 12.6g/dL、PLT 361×109/Lであったが、APTTは149.1秒と著明な延長を認めたため、後天性血友病が疑われ、担当医に報告しクロスミキシング試験(CMT)が依頼された。CMTは即時反応、遅延反応ともにIntex of circulation anticoagulantにてインヒビターの判定となり、とくに遅延反応では顕著であった。造影CTでは、両側胸壁および右上腹部皮下に血腫が認められた。第Ⅷ因子活性は1%未満、第Ⅷ因子インヒビター値は89.1BU/mLと高値を示し、後天性血友病Aと診断された。現病は小康状態が続いていたが、入院10日目に顔面蒼白、血圧およびHb が急激に低下し、出血性ショックとなった。同日より、ノボセブン(rFⅦa)投与に加え、アドナおよびトランサミンの内服による出血抑制治療が開始された。赤血球輸血を継続して行ったが、Hbの回復は一過性であった。ステロイドパルス療法とエンドキサンの内服も開始されたが奏功せず、入院13日目に永眠された。
【結語】本症例と同様に、皮膚疾患を背景とした後天性血友病Aの発症は複数報告されている。原因不明であるAPTTの極度な延長は早期に精査を行い、担当医と迅速に結果を共有することの重要さを再認識した。(連絡先:村野胡桃 03-5363-3683)
【症例】60代、男性。20XX年6月より手指に紅斑と水疱が出現し、次第に全身へ拡大したが自宅にて経過観察されていた。同年7月、他院にて水疱性類天疱瘡と診断され、ステロイド治療が開始された。しかし改善が認められず、19日後に加療目的で当院入院となった。
【臨床経過】当院初診時の採血において、PT 9.0秒、 Hb 12.6g/dL、PLT 361×109/Lであったが、APTTは149.1秒と著明な延長を認めたため、後天性血友病が疑われ、担当医に報告しクロスミキシング試験(CMT)が依頼された。CMTは即時反応、遅延反応ともにIntex of circulation anticoagulantにてインヒビターの判定となり、とくに遅延反応では顕著であった。造影CTでは、両側胸壁および右上腹部皮下に血腫が認められた。第Ⅷ因子活性は1%未満、第Ⅷ因子インヒビター値は89.1BU/mLと高値を示し、後天性血友病Aと診断された。現病は小康状態が続いていたが、入院10日目に顔面蒼白、血圧およびHb が急激に低下し、出血性ショックとなった。同日より、ノボセブン(rFⅦa)投与に加え、アドナおよびトランサミンの内服による出血抑制治療が開始された。赤血球輸血を継続して行ったが、Hbの回復は一過性であった。ステロイドパルス療法とエンドキサンの内服も開始されたが奏功せず、入院13日目に永眠された。
【結語】本症例と同様に、皮膚疾患を背景とした後天性血友病Aの発症は複数報告されている。原因不明であるAPTTの極度な延長は早期に精査を行い、担当医と迅速に結果を共有することの重要さを再認識した。(連絡先:村野胡桃 03-5363-3683)
