講演情報

[LS5]いまさら聞けない、FDPとDダイマーの基礎

*神永 紗由里1 (1. PHC株式会社 国内営業本部 診断薬学術・CSセンター 学術課)
本研修会のテーマは「いまさら聞けない、FDPとDダイマーの基礎」です。両項目はPT・APTTと並ぶ代表的な血栓止血関連検査ですが、「何を測っているのか」「併用の意義は何か」「試薬間差が生じる理由と標準化がなぜ難しいのか」といった疑問は少なくありません。本発表では、止血から線溶に至る反応を踏まえ、FDPとDダイマーの測定原理・病態生理・臨床的活用を整理します。まず、凝固反応で形成されたフィブリンは、tPAにより活性化されたプラスミンによって分解されます。フィブリンの分解産物がDダイマーであり、線溶が過剰に進みフィブリノゲンや関連分子まで分解されるとフィブリノゲン分解産物(FgDP)が生じます。FDPはFgDPとDダイマーの総称で、線溶が適切に制御されている状況では両項目は近似し得る一方、過剰線溶ではFDPが相対的に高値となります。次に、両項目はヘテロな分子群を標的とするため、モノクローナル抗体の反応性やキャリブレーターを構成する成分の差により測定値の不一致が生じ得ます。したがって、自施設で用いる試薬の特性把握と、とくに低濃度域の精度管理が重要です。臨床応用では、DIC診断におけるFDPとDダイマーの位置づけ(高度な線溶活性化状態でのFDP優位な上昇、正常値でのDIC可能性の低下)を再確認し、近年重視されているVTE除外診断におけるDダイマー低値の意義も解説します。FDPとDダイマーを併せて読み解くことにより、DICからVTEまでの病態評価に資することを目指します。