特別講演
ダイナミクス研究からモビリティ・イノベーション
講師:須田 義大 氏
東京工科大学 片柳研究所教授 未来モビリティ研究センター長
東京大学名誉教授
日本機械学会名誉会員
モビリティの基本は,自動車や鉄道車両のような車両技術と,道路や軌道のようなインフラ技術,移動の主体となる人間の行動,そして,それらをつなぐ情報通信技術からなる.モビリティは,移動することが最大の目的であるから,動きを制御する技術が重要になる.すなわち,モビリティ研究の大きな柱は,ダイナミクス研究にある.筆者は,長年,応用分野を主としてモビリティとして,機力・制御を専門分野としながら,多くの関連研究分野と連携し,人間工学,環境心理学,トライボロジーなどの接触力学,そして,情報通信やAIなども適用して,実践的な研究を進めてきた.その成果の一部は,実用化に結びついており,例えば,鉄道のスピードアップや快適性の向上,新たな都市交通システムの提案,近年注目を集めている自動車の自動運転の社会実装,交通空白の解消や高齢者などの交通弱者の移動のための,小型モビリティの開発などである.社会実装に結びつけるためには,学術研究のみならず,産業界や行政などとも連携し,社会制度の確立や社会受容性の醸成にも心がけた.ベンチャー企業や学協会・一般社団法人等も立ち上げて,社会貢献やコミュニティの構築も実践してきた.本講演は,筆者の経験をベースとしつつ,今後のこの分野の研究者の一層の活躍と,研究分野の活性化を期待した紹介としたい.