講演情報

[スポーツ文化-B-04]大学にとって運動部とは何なのか(哲)関東に所在する一国立大学の規程に基づく考察

*岸井 貴春1 (1. 筑波大学大学院)
PDFダウンロードPDFダウンロード
大学生らにより構成され、大学を中心に活動するスポーツ団体は運動部と呼ばれ、その活動は課外活動として、学校教育の一環だと捉えられている。ただし、学校が管理責任を有する中・高の運動部活動とは異なり、その具体的活動は学生が責任を持ち遂行するとされる。このようないわゆる学生自治の体制は不透明であるとの疑念が持たれ、「大学スポーツの振興に関する検討会議」に始まる大学スポーツのガバナンス改革が求められるようになった。この不透明さは、研究面にも影響を与えている。大学生の運動部を対象とした研究では、主に心理学や社会学の領域においてその活動を通じた能力や地位の獲得といった機能が論じられているものの、肝心の対象となる運動部の定義に一定の共通了解がない。つまり、対象の同定という点からすでにその論理的基盤が欠如し、議論の一般化を不可能にしているという問題を指摘することができる。この問題は、研究と実践の接続を困難にするのみでなく、成果の比較対象が存在しないために進行しつつある改革の正当な評価を不可能にしてしまう。
 そこで、本発表では大学の管理体制から運動部とはどう定義されていたかを明らかにする。そこから、これまで大学が運動部の具体的活動を管理してこなかった理由を考察する。そのために、大学内に存在する規程を確認する。そこから、大学教育論を参照しつつ、定義される集団の名称や、届出や会議などの手続きに注目して整理する。なお、本発表が対象とするのは、関東に所在する大学スポーツ改革に積極的な国立大学である。結論として、大学は運動部を定義していないことが見出された。学生のスポーツ団体であっても、それは課外活動団体と定義される団体の一つでしかなく、スポーツの特殊性を扱う論理は見出されなかった。本発表の独自性は、このスポーツの特殊性が無視される体制の妥当性を主張し、ガバナンスの欠如として扱わないことにある。

コメント

コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン