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[スポーツ文化-A-01]1949年水泳のアメリカ遠征は何をもたらしたか(史)日本語新聞からの検討

*和所 泰史1 (1. 静岡産業大学)
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第二次世界大戦後、日本は1948年オリンピック大会に招待されず、次の1952年オリンピック大会に出場を目指すこととなった。当時の規定ではオリンピック大会に参加するための条件として国際競技連盟の加盟が条件となっており、日本の水泳競技は1949年6月15日に復帰した。こうして同年8月のロサンゼルスで開催される全米水泳選手権大会とハワイで開催される国際水泳大会に参加することになった。この水泳のアメリカ遠征は戦後最初の国際競技大会の参加とされている。本研究の目的は、1949年8月の水泳のアメリカ遠征が戦後日本の近代オリンピック大会といった国際スポーツ界復帰に与えた影響を検討するものである。検討する史料は国内で発行されていた朝日新聞、毎日新聞、読売新聞のほか、カリフォルニア州で発行されていた羅府新報、加州毎日、ハワイ州で発行されていた布哇タイムス、布哇報知である。
本研究の検討結果、日本の水泳の国際水泳連盟復帰が決まると、ロサンゼルスでは「日本水泳選手を招く会」が結成され、在留邦人による募金活動が開始された。1949年8月16日に全米選手権が開幕し、日本の水泳選手が世界記録を次々と樹立し、大会3日目になると、ハリウッド俳優なども来場し、4日間の合計入場者数は25,000人であった。さらに、ロサンゼルスからハワイに移動し、8月25日から開催される国際水泳大会に出場し、再び日本の水泳選手は世界新記録を樹立するなど、アメリカの水泳選手を圧倒した。帰国後に渡米選手の手記が『使命を果して』と題して発行されるよう、日本人選手の国際スポーツ大会への出場の意義は重要であったと考えられる。本研究の結果から明らかになった点は、国際親善の寄与、アメリカ在住の日本人の貢献、日本国民の気持ちを奮起させたことの3点である。しかし渡米選手の活躍が、その後の選手生活に影響を及ぼすことを示唆する結果も見受けられた。

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