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[スポーツ文化-B-17]スケートボードのグローバルヒストリーを描く試み(哲,史,社)「文化帝国主義」を乗り越えるスケートボード文化とは

*市井 吉興1 (1. 立命館大学)
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これまで一般的に受容されてきたスケートボードの歴史とは、どのようなものであろうか。おそらく、スケートボードとはアメリカ発祥の「スポーツ」であり、メディアによって創られた感はあるにせよ、アメリカ西海岸の「カリフォルニア」を中心に多様な発展を遂げてきた若者の文化という認識が定番となっているのかもしれない。たしかに、このような認識は完全な間違いとは言い難い。しかし、たとえば、2020年の東京オリンピックにスケートボードが公式競技として採用されたことが象徴するように、スケートボードは上記のような理解を越えたグローバルな展開を遂げている。本報告の目的は、アメリカ発祥のスポーツゆえに伝播の過程で意図的かつ自覚なく付与されてきた「文化帝国主義」というラベリングを超克し、さらなるスケートボード文化の発展を探るという関心のもと、スケートボードの「グローバルヒストリー」を描くための論点整理を試みることにある。そこで、本報告では、冷戦体制下、西側資本主義/アメリカ帝国主義と対峙する社会主義国であった旧東ドイツ(ドイツ民主共和国)で活動していたスケーターたち、2000年代より「スケートボードを通じて紛争や貧困にあえぐ世界各地域に住む若者たちをエンパワメントする」という理念を掲げ活動している国際的なNPO「スケーティスタン」、スケーティスタンと同様の理念を掲げ、元プロスケーターのダラス・オーバーホルツァーが南アフリカで運営する「インディゴスケートキャンプ」という、スケートボードを用いた社会的実践に注目する。時間と空間の拡がりのなかで歴史を捉え直すというグローバルヒストリーの視座から、これらの諸活動の分析をすることで、さらなるスケートボード文化の発展の糸口が探れるのではないかと考える。

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