講演情報
[競技スポーツ-A-33]損失/利得の状況認知がリスクの高いプレー選好を誘導する(心)
*水落 文夫1、大門 千紗1 (1. 日本大学)
スポーツ競技場面における様々なプレッシャーによって選手のパフォーマンスは低下する。これまで心理的ストレス下でプレーの精度が低下することについて、その現象や原因が様々に研究され、その理論構築も進んでいる。ただし、パフォーマンス低下の問題は、この企画・実行プロセスに先行する判断・意思決定プロセスでも起こっている。強敵に追い込まれた選手の、練習でもやらない高度なショットの選択による自滅など、プレーの精度以前のプレー選択の段階でのミスである。本研究の関心は、選手の意思決定に関与する損失/利得の認知といったフレーミング効果と、衝動的な意思決定の背後にある特性的な側面としての自動思考であり、それらの心理的ストレス負荷による影響である。そこで、太田ら(2016)の実験デザインを参考に、ボッチャボールを非利き手の下手投げで3m先の目標位置に停止させるという運動課題を用いた実験室実験を進めている。その結果、20試行の投球データの正規性が23名中20名に認められ、各被験者の平均値は目標に近かった(平均値292cm).その平均値がプレー選好にみられる意思決定の結果と捉えられる。20試行の標準偏差から数理モデルによって、目標停止位置を超えると0点になるというリスクに対して、総合得点を最大化するための各被験者が目指すべき合理的停止位置が算出された。しかし、4名を除く被験者は利得条件(10試行)、損失条件(10試行)のいずれもこの合理的位置を超えた位置に投球しており、それは利得条件より損失条件が有意に大きかった(t=3.191、p<.01)。まだ5名の被験者であるが、スポーツ競技自動思考尺度(有冨ら、2017)によって評価された自動思考の「促進的教示」因子と利得条件の「投球停止位置-合理的停止位置」に有意な相関関係が認められた(r=.884、p<.05)。
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