講演情報
[競技スポーツ-A-21]ダンスにおける他者と横一列で歩くパフォーマンスのコーチング事例(方)「動きの模倣」を取り入れた指導実践
*齋藤 瀬奈1、寺山 由美2 (1. 筑波大学人間総合科学学術院コーチング学学位プログラム、2. 筑波大学体育系)
集団でのスポーツやダンスは、仲間と連携したプレーや協調したパフォーマンスが求められる場面がある。特にダンスの場合は、群と呼ばれ、多くのダンサーの共同した動きのハーモニーを意味し、個の人間を超え、その総和以上のものとして身体表現を成り立たせる(松本、2008)。そもそも、ダンスとは、観る者が、身体運動を通して「〜のようにみえる」という幻影を見出すこと(ランガー、1971)が本質である。したがって、群で踊ることは、集団行動のような規律した運動を生み出すことではなく、他者と一体となり、幻影として何かを表現することが重要であると考えられる。では、他者と一体となって踊るためには、どのような能力が必要か。尼ヶ崎(1990)は、コミュニケーションとは、身体的レベルで他者と相互理解することであるとし、二つの身体が一つのダンスを踊ることに例えている。この考え方から着想を得ると、ダンサーには、他者の立場に立ち身体で理解し合う力が必要であると考えられる。しかし、事例対象のA大学ダンス部は、高い身体技術を有する者が多いにも関わらず、ダンサー同士が横一列になって歩く単純なパフォーマンスで、真っ直ぐな列を保って歩けないという問題を抱えていた。そして、特に列を乱す部員Bは、その要因として、他者の身体に意識が向いておらず、横のダンサーの動きを把握できていないことが挙げられた。そこで、二人組になりパートナーの動きを即時に模倣する活動を取り入れ、指導した。理由は、模倣が他者の身体感覚を理解することにつながる(生田、1987)ことから、動きの模倣を通して、部員Bに他者を理解するための身体感覚を獲得させたいと考えたためである。指導の結果、真っ直ぐな列を保って歩けるようになった。現在は、多くのダンス部で、動きが揃うまで反復させる指導方法がとられているが、本研究は、新たな指導法や指導の観点として寄与することを目指す。
コメント
コメントの閲覧・投稿にはログインが必要です。ログイン