講演情報

[学校保健体育-A-13]高等学校保健体育科教師が生徒のニーズに応じた指導実践に至るまでのプロセス(ア)運動指導場面に着目して

*小林 裕季1、齊藤 仁人2、齊藤 まゆみ1 (1. 筑波大学、2. 茨城県立土浦工業高校)
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近年、学校体育現場では、児童生徒の運動の二極化や特別な支援を必要とする児童生徒の存在が挙げられ(スポーツ庁,2023)、様々なニーズに対する指導が求められている。一方、高等学校段階では、小学校・中学校に比べて個別のニーズに対する支援が十分実施できていない現状がある(文部科学省,2023)。このことから、現場の高等学校保健体育科教師(以下、保体科教師)が指導上の困難を抱えながらも指導実践を重ね、困難を克服していくプロセスがあり、このプロセスを明らかにすることで現場で困難を抱えている保体科教師にとっての道標になると考えた。そこで本研究では、保体科教師が体育授業の運動指導場面において生徒のニーズに応じた指導実践に至るまでのプロセスを明らかにすることを目的とした。また、生成されたプロセスを通して、生徒のニーズに応じた指導実践に必要な教師の専門性・授業の実践力についても検討した。研究方法は、これまでの指導実践において困難を抱えたことがある保体科教師のうち「障害のある生徒への指導経験」「教員養成段階、研修等でのアダプテッド体育や特別支援教育の受講経験」「全日制・定時制の高等学校への勤務経験」から2項目以上を満たす者を対象に半構造化インタビュー調査とM-GTAによる分析を行った。その結果、保体科教師が生徒のニーズに応じた指導実践に至るプロセスは<無自覚><課題の認識><課題解決のための実践><授業スタイルの確立><学び続ける姿勢>の5段階に変容することが明らかになった。また、生成されたプロセスを通して、生徒のニーズに応じた指導実践に必要な保体科教師の専門性と授業の実践力について検討した結果、「体育の専門性」「生徒のニーズの把握・理解」「アダプテッドの視点」という3つの専門性と「個のニーズに応じた実践」「体育授業としての実践」「合目的対応」という3つの実践力が必要であることが示唆された。

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