講演情報

[生涯スポーツ-B-01]外国につながる児童の体力・運動能力(社)都内A小学校の児童を対象とした体力測定から

*宮本 幸子1、松下 由季1 (1. 笹川スポーツ財団)
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子どもの格差は、社会経済的地位(SES)、ジェンダー、国籍や言語などにより生じている。体育・スポーツの研究において、SESやジェンダーの観点から行われた調査や分析は多く存在するが、国籍や言語による差にはほとんど着目されていない。本研究は、東京23区内の公立A小学校を事例として、外国につながる児童(国籍を問わず外国にルーツをもつ児童)の体力・運動能力の実態を明らかにする。
調査方法は、A小学校に在籍する児童に対する体力測定、および児童・保護者に対する質問紙調査であり、本報告では2~6年生のデータを用いる。体力測定については文部科学省の「新体力テスト」に準じて握力・20mシャトルランなど計8種目を測定し、項目別得点表に基づいて総合得点を算出した。そのうえで種目別の測定値および総合得点を、学年・男女別にTスコア化して分析に用いた。また、A小学校には日本語学級で学ぶ児童や通訳が必要な保護者がいるため、質問紙に関しては日本語のほかに中国語・ネパール語・英語の版を用意した。本報告では、いずれかの保護者の第一言語が日本語以外の場合を「移民」、いずれの保護者(ひとり親の場合を含む)の第一言語も日本語の場合を「日本人」と定義し、両者の体力・運動能力の違いを中心に検討する(保護者の第一言語に関する質問に無回答であったケースは分析から除外する)。サンプルにおける移民は57名、日本人は113名であり、移民の保護者の第一言語は中国語をはじめ計13言語に及んでいた。
体力測定のTスコアの平均値をみると、50m走・20mシャトルラン・反復横跳びの3種目および総合得点で、移民のほうが有意に低い結果となった。移民の平均値が有意に高い種目はみられなかった。本報告では質問紙調査の項目も用いた分析を追加する。なお、本調査は1校の事例研究であり、結論の一般化は難しい点には注意が必要である。

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