講演情報

[生涯スポーツ-A-08]スポーツ市場拡大における新しい価値の創造(経)プロスポーツを中心とはしないフィットネス市場の拡大

*簗取 萌1、平野 貴士2 (1. 作新学院大学、2. 武蔵野大学)
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スポーツの産業発展に関する従来の研究では、プロスポーツに重点が置かれている。1980年代、アマチュアスポーツがスポンサーシップを受けてプロ化し、それを取り巻く関連用品・施設・メディアが登場し、スポーツの産業化が進んだ(原田,2021)。1990年代以降は、プロリーグの設立に伴うプロチームの増加を背景として、トップ選手・観客・スポンサー・地域社会などのマネジメントを通じたプロスポーツの事業拡大がなされた(宇野・山口,2024)。つまり、スポーツ産業の発展において、プロスポーツの事業拡大が主要な要因である。
しかしながら、プロスポーツに着目したアプローチでは、フィットネス市場のようなプロスポーツを中心とはしない市場の拡大を十分には説明できない。日本のフィットネス市場は、野球やサッカーなどのプロスポーツ市場が縮小する状況で、急激な市場拡大を遂げている。この要因について、24時間営業や女性用など新規セグメントの出現が指摘されたが(古屋,2021)、市場拡大が包括的に説明されたわけではない。したがって、本研究の中心的な問いは、「どのようにフィットネス市場は急速に拡大したのか」とする。
その方法としては、社会構成主義的なアプローチを用いる(Munir et al.,2021)。スポーツの価値は一義的ではなく社会的に構築されるという前提にたち、どのようにフィットネスの価値が構築されて社会に普及したのかを検討する。その際には、『Tarzan』などの雑誌や政策文書の内容分析、インタビュー、公開資料などを用いた事例分析を行う。予備調査では、フィットネスの価値は、従業員の健康を維持して企業の医療費を削減する「経済的な価値」から、自らの健康を維持して生活の質を向上させる「心理的価値」へと移行したことが示唆された。本研究の結果は、フィットネス産業に留まらず、予防医療などの政策立案においても活用できるだろう。

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