講演情報

[08測-口-12]大学柔道選手における頭部衝撃発生状況の性差

*越田 専太郎1、石井 孝法1、久保田 浩史2、長谷川 龍成1、中川原 知波3、中禮 宏4 (1. SBC東京医療大学、2. 東京学芸大学、3. 早稲田大学大学院、4. 東京医科歯科大学)
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柔道は頭部外傷のリスクが高い競技と考えられており、特に投技により相手に投げられる状況で頭部に衝撃が加わることが、主な受傷要因とされてきた。しかし、Koshida et al. (2023)の探索的研究では、投技以外の状況でも頭部に衝撃が加わることが明らかになった。さらに、先行研究は、男子と比べて女子柔道選手で脳振盪の発生率が高かったことを報告している。これらの結果は、柔道選手が頭部外傷のリスクにさらされる状況に性差がある可能性を示唆している。 そこで本研究では、大学柔道選手を対象に、練習中に加わる頭部衝撃の発生状況が性別により異なるかを明らかにすることを目的とした。対象は大学生男子柔道選手4名と大学生女子柔道選手5名であった。各対象にはマウスガード型慣性センサを装着してもらい、練習時に頭部に加わる直線加速度(PLA, g)と角加速度(PRA, rad/s2)を計測した。頭部衝撃の分析対象は先行研究を基にPLA10g以上とし、頭部衝撃頻度およびその大きさを性別ごとに算出した。また、自由練習時の映像を慣性センサのデータと同期させ、頭部衝撃が加わった際の状況を同定した。各状況における頭部衝撃頻度の性差はχ2検定および残差分析を、PLAおよびPRAの性差はMann-WhitneyのU-テストを用いて検討した。柔道での各状況における頭部衝撃の頻度には性差の影響が中程度認められ(χ2 = 23.25, p < 0.001, df =4, Cramér's V = 0.27)、女性選手においては「投げられた状況」での頭部衝撃頻度が有意に少なかった(調整済み残差=-2.1)。一方で、各状況におけるPLAとPRAの分布には性差は認められなかった(PLA: U=14521.0, p =0.17、PRA:U =13734.0, p =0.65)。ただし、本研究のサンプルサイズは小さく、結果の解釈には注意を要する。

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