講演情報

[02社-口-09]体育・スポーツ・健康科学分野の研究における“性”の扱われ方

*高峰 修1、大勝 志津穂2、工藤 由依、田中 千晶3、三上 純4 (1. 明治大学、2. 椙山女学園大学、3. 東京家政学院大学、4. 大阪大学)
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従来の学術研究をジェンダー視点から問い直す研究は、国外では1980年代から始まっており、国内でも2000年を超えた頃から議論が始まった。最近ではSTEM分野を中心に科学的な技術や知識を見直すジェンダード・イノベーションに注目が集まり、いくつかの権威ある国際的な研究誌や出版社においては調査研究における性に関する指針が示されてもいる。こうした状況の中、体育・スポーツ・健康科学分野では性別や性差はどのように扱われているのだろうか。このことを把握するために、体育・スポーツ・健康科学分野の8誌(体育学研究、体力科学、発育発達研究、スポーツ心理学研究、スポーツ社会学研究、体育科教育学研究、生涯スポーツ学研究、スポーツとジェンダー研究)に掲載された論文(研究資料等を含む)を対象に、性別と性差に焦点を当てたレビューを行った。対象期間は2013年1月から2022年12月であり、「人間を対象に各種調査・実験・観察を行った実証研究」という条件を設け、8誌1,056本を分析対象とした。分析対象論文においては、約半数の538本が男性と女性の両者を、あるいは「その他」「不明」等のカテゴリも加えて分析の対象としていた。これら538本のうち研究結果を数値で示した483本を対象に「どのように分析しているか」について分類すると、女性と男性の両者を研究対象としながらも性別での分析を行っていないものが40.0%を占め、性差について考慮した実験や分析を行っているものは13.5%に留まった。さらに「分析結果をどのように解釈しているか」について分類すると、両性を研究対象としながらも性差についての言及、考察がないものが44.7%、性差があることは示したものの、その要因や背景については考察していないものが18.0%を占めた。また論文の中で性の多様性を捉える視点をもつと思われる記述や説明があるものはわずか2.0%であった。

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