講演情報
[05バ-口-04]ハンマー投げ競技者が投擲物に加える牽引力のうち加速に利用できる力の割合をより高めるための2つの理論的な方法とその有用性
*野中 愛里1、藤井 範久2 (1. 筑波大学大学院、2. 筑波大学)
ハンマー投げは投擲競技の中で最も大きな牽引力(FH)を必要とする種目であるが、加速に利用できるのはそのうち僅か10%程度である。この割合はワイヤと鉄球速度との間の角度(θ)が90°より小さくなるほど増加するが、θをより小さくするためのFHの加え方は現在まで明らかにされていない。理論的には①ケーブルの長手方向軸のFH(FH.Long)を増加させてハンドルグリップを動かす方法と②ケーブルの直交方向軸(回転方向)のFH(FH.Orth)を増加させてハンドルグリップを動かす方法がθを減少させると推察されるが、慣性抵抗の違いから、その機序は①②の間で異なる可能性がある。本研究ではFHの加え方①②がハンマーの挙動に与える影響の相違を分析した。ハンマー投げ動作中の運動学情報を元に3リンクのハンマーモデルを作成した。加速期開始時点の運動学情報を初期条件とし、逆動力学計算によって算出したFH.LongとFH.Orthをそれぞれ最大値の±1.44%以内で変動させ、グリップ部に作用するFHとして入力してハンマーの運動学情報を順動力学計算によって取得した。入力したFH.LongおよびFH.Orthの変動幅と、FH、θおよび鉄球速度の変化量との関係を表す回帰直線の勾配を①②の間で比較した。FH.LongおよびFH.Orthが1.44%増加するとθは減少、鉄球速度は増加し、計算上の投射距離は約1.97 mおよび0.35 m長くなった。したがって、①②はどちらもθを減少させて加速に利用できる力の割合を高めるために有用である可能性が示唆された。一方でFH.Longの変動によるFHの増加量、θの減少量、および鉄球速度の増加量は、FH.Orthの変動による増加・減少量よりも大きかった。したがって、①は加速に利用できる力の割合をより高め、②は牽引力のより大きな増加を伴わずに鉄球を加速させる可能性が示唆された。
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