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[00哲-口-10]Philosophy, Science, Sportの名辞が書名に含まれているイギリス近代の単行本についてJ.A.Paris(1827),Philosophy in Sport made Science in Earnest…の文献学的考察

*榊原 浩晃1 (1. 福岡教育大学)
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近代イギリスのスポーツ関連文献を渉猟するうちに、標記の単行本の存在を確認した。Philosophy, Science, Sportの名辞が書名に含まれている。著者John Ayrton Parisは、作家で医学者でもあり、彼の息子のために知的好奇心をそそる内容の単行本を1827年出版した(初版)とされている。イギリスの作家で自然哲学の入門書(対話篇)Conversations on Natural Philosophy(1819年)を執筆したJane Marcetの叙述スタイルを真似て、題材として子どもたちの遊戯やスポーツを取り上げて解説したものであった。イギリスでは、現在の自然科学に至る以前には、自然哲学の用語が用いられていたといわれる。空間の知覚や物質の認識、物体の移動すなわち運動(物体の移動の意味)、エネルギー(活力)や生命などの自然科学の根本的な概念を子どもの遊戯やスポーツによって認識論的に考察しており、いわば哲学的な原理が紹介されていた。科学(Science)は使役の意味のmake(made)によって「科学する(科学的に探究された)」と表記され、遊戯やスポーツを科学的に探究することが根本的な考え方(philosophy)であったと解釈される。今日のスポーツがする・見る・支えると共に、知的探究の対象であることを考えると、近代初期のイギリスの知識人もそうした考え方を既に1820年代に表明していたことになり、本書の文献学的考察は、歴史的・哲学的に重要なことであると考えられる。近代イギリスでは野蛮と放縦な庶民のスポーツ(ブラッディ・スポーツなど)や娯楽が興隆していても、スポーツは、知識人とその子どもたちにとっては、当時にして知的探究の対象とされていたのである。

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