講演情報

[09方-ポ-43]イップス症状を呈する野球競技者の投球動作の特徴の解明非イップス競技者との投球腕のキネマティクス比較から

*田村 雄志1、松田 晃二郎2、相羽 枝莉子3 (1. 福岡大学、2. 城西大学、3. 横浜国立大学)
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イップスとは、運動スキルの遂行に影響する不随意運動から成る長期的な運動障がい(Roberts et al, 2013)と定義され、これまであたりまえにできていた運動動作が心理的、神経的、生理的な多様な要因によって遂行できなくなる現象の総称である。野球におけるイップスは、主に投球・送球動作時に表出することが報告されており、その発生要因や対処法についておもに心理学的手法によって明らかにしようと試みた研究が多く報告されている。本研究では、イップス症状を呈する学生野球競技者(yips群:n=10)とイップスの経験がない学生野球競技者(non yips群:n=10)の投球動作における投球腕のキネマティクスを比較することによって、イップス症状を呈する野球選手の投球動作の特徴を明らかにすることを試みた。被検者には、9.22m先に立つ検者が胸元に構えたグラブを目掛けて10球ずつ投球を行わせ、構えたグラブから送球が最も逸れた試技を分析対象とした。被検者の投球動作は、12台のカメラから構成される光学式モーションキャプチャシステムによって500Hzで記録した。投球腕のフォワードスイング開始からリリースまでを分析区間とし、肩関節、肘関節および手関節の関節角度、角速度を算出した。平均値の差の検定には対応のないt検定を用い、有意水準は5%未満とした。その結果、肩関節、肘関節および手関節角速度に統計的に有意な差は認められず、イップス症状を呈する競技者に共通する特有の動作を見出すことはできなかった。一方でnon yips群のすべての被検者がリリース時に肩関節内旋角速度(322.7±186.4deg/s)を有していたのに対して、yips群では10名中4名の被検者が内旋方向の角速度を示さず(-81.7±23.1deg/s)、肘関節伸展および手関節掌屈動作に依存したリリースを行っていることが観察された。

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