講演情報
[05バ-ポ-22]香りの呈示が運動制御機能に与える影響レモン香料とペパーミント香料のケーススタディ
*遠藤 慎也1、西垣 景太1、伊藤 兼敏2、荒木 将司2、後藤 幸生2、星野 邦秀2 (1. 東海大学 健康学部、2. 高砂香料工業株式会社 研究開発本部)
本研究は、レモンおよびペパーミント香料が位置覚および筋力発揮調整能に及ぼす影響を検証することとした。被験者は健康な大学生12名(男女各6名、平均年齢20.4歳)とし、コントロール(無香条件)、レモン香料、ペパーミント香料の条件でランダム化クロスオーバー試験を実施した。実験では、高砂香料工業株式会社製の香料を吸収させた綿球をフェイスシールドに貼付し、測定中は常に香りを吸入させた。位置覚測定は、多用途筋機能評価運動装置Biodex system 4を用いて、膝関節屈曲を15度、45度、60度を目標角度としてその位置を数回練習して覚えた後に、他動運動中に目標角度に到達したと被験者が感じたところで停止ボタンを押させた。測定は各3回行い、すべて閉眼で行った。関節位置覚は、対象者が決定した予測角度と目標角度との絶対誤差として算出した。筋力発揮調整能測定は、画面上に映し出される相対的要求値(最大握力の5~25%)を0.1Hzで変動する正弦波で表示した。利き手による45秒の握力発揮を3回試行した。筋力発揮調整能の評価として、開始5秒間のデータを除外した要求値と発揮値の誤差の総和(%)を絶対値化し、最も少ない誤差総和(%)を算出した。その結果、位置覚には香りの呈示が影響しないことが明らかになった。一方、筋力発揮調整能は収縮局面と弛緩局面に分けて分析した結果、収縮局面においてレモン(72.2±38.5)およびペパーミント(73.4±38.7)香料の呈示により、コントロール(60.5±26.0)よりも誤差が有意に大きくなる傾向がみられた。呼吸機能の向上や疲労感の減少に有効とされるレモン香料やペパーミント香料は、筋力発揮調整能に影響する可能性が示された。このことから、最大下での筋力発揮調整能が求められる日常生活やスポーツ現場において香りの影響を考慮する必要があるといえる。
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