講演情報
[03心-ポ-57]表現動作における動きの緩急が印象形成に及ぼす影響
*牧田 優1、成瀬 九美2 (1. 奈良女子大学大学院、2. 奈良女子大学)
表現系ダンスでは、表したい内容に添ったモチーフを繋げてひと流れの動きにして、時間や空間の変化を付けていく。この変化は動作者の気持ちを変え、鑑賞者に与える印象を深めることに貢献する。本研究では変化の時間的要素を取り上げて、鑑賞者に及ぼす影響を印象評価調査と主観的時間評価から検討する。提示動作に用いるモチーフは、ダイナミックな踊りを特徴とするよさこい演舞に頻出する腕回旋(両腕を前額面で交互に回す)とした。よさこいの演舞には、両足を大きく横に開き重心を低くするなどの身体そのものを大きく見せる技法以外に、速い動きの静止や素早い動き始めなど、動きに緩急を付けた表現技法がみられる。演舞経験者(女性)がモデルとなり、緩急の有無と緩急を付けるタイミングを操作し、緩急を付けて動く演舞と終始等速で動く演舞、緩急をモチーフの序盤に付ける演舞と終盤に付ける演舞、の各2パターンずつ刺激動画を作成し、プロジェクターを通じてスクリーンに投影し実験協力者に提示した。大学生女子20名が実験に参加した(奈良女子大学研究倫理審査委員会承認番号23-23)。緩急技法の有無を違えた刺激動画に対して、石黒(1989)の「美」「快適情緒」「特異性」「熱中性」「力動性」の5因子を用いて5段階で印象評価を求めた。技法有り動画は技法無し動画に比べて、「力動性」(ダイナミックな、エネルギッシュな)や、「快適情緒」(力強い、生き生きした)の得点が有意に高く、緩急技法が印象形成に影響した。緩急技法の挿入時期を違えた刺激動画に対して、鑑賞後に主観的時間評価を行った。見ていた時間(標準時間)と同等と思う時間(再生時間)をボタン押しで再生することを求め分析した結果、両時間の差異は緩急技法が終盤にある場合に序盤にある場合より大きく時間知覚に影響した。緩急の有無に加えて、それを行うタイミングも鑑賞者の印象形成に関与することが示された。
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