講演情報
[03心-ポ-38]日本人男性柔道指導者は嘉納治五郎師範の柔道観に基づいてどのように指導しているのか?計量テキスト分析を用いた検討
*柴田 大地1、高井 秀明2 (1. 日本体育大学大学院、2. 日本体育大学)
本研究の目的は、日本人柔道指導者が嘉納治五郎師範の柔道観(以下「嘉納柔道観」と略す:知力、精神修養、武術性、体力・健康、精力善用、自他共栄)に基づいた指導をどのように実践しているのかについて検討することである。対象者は、公益社団法人全日本柔道連盟が認定する公認柔道指導者資格を保有し、柔道指導者として10年以上の指導歴を有する男性の指導者7名(平均年齢44.4±11.3歳)であった。データ収集は、永木・山崎(2005)が開発した「嘉納柔道観尺度」を基に、指導実践の内容を半構造化インタビューによって行った。インタビュー内容は、対象者の承諾を得たうえでICレコーダーに録音し、逐語録を作成して言語データとして使用した。分析には、計量テキスト分析ソフトである KH coder 3.Beta.03i(樋口、2020)を使用し、嘉納柔道観の6つの観点ごとに共起ネットワーク分析を行った。その結果、①【知力】では、6因子が抽出された(例:見取り稽古)。②【精神修養】では、6因子が抽出された(例:道場に入る前や他者に対する礼法)。③【体力・健康】では、7因子が抽出された(例:朝練習)。④【武術性】では、4因子が抽出された(例:護身術の観点での非指導)。⑤【精力善用】では、6因子が抽出された(例:大会運営の手伝い)。⑥【自他共栄】では6因子が抽出された(例:相手の立場で物事を考えること)。以上の結果から、日本人男性指導者は嘉納柔道観の6つの観点を適宜取り入れながら、日々の指導に従事していることが明らかとなった。また、永木ほか(2000)は武術性を「ルールによって規定される『競技』とは元来相容れない次元にあり、『競技化の促進』に伴って弱まっていくもの」であると述べており、現代の柔道指導に携わる本研究の対象者においても、その特徴があらわれたものと推察される。
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