講演情報

[10保-ポ-04]保健知識を問う問題の質に関する研究

*物部 博文1、小浜 明2 (1. 横浜国立大学、2. 仙台大学)
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日常経験から自然現象に関する自分なりの理解、いわゆる素朴概念(naive conception)が、保健に限らず学習に活用される場面がある.例えば、藤岡(1989)は、よい問題の4つの基準として具体性、検証可能性、意外性、予測可能性をあげているが、このなかの意外性は、日常経験による自然現象への児童生徒なりの理解と教室文脈との齟齬が生じている状況であると推測される。本研究では、高等学校の学習過程を修了した大学生の保健の知識問題への回答傾向の特性について、授業の発問・教材につながるという観点から明らかにすることを目的とした。調査は、大学1年生228名を対象に保健に関する問題、感情・価値・期待、保健の生活への適用等の項目を含む自記式質問紙調査を、2023年4月24日に実施した。保健の知識問題は、エイズの感染経路、インフルエンザの予防接種、感染症の予防方法、教室の換気、新型コロナウイルスの感染力、十分な手洗いの効果、マスクの効果、かぜ、心臓の位置、胸骨圧迫の部位、AEDの役割、乳歯と永久歯、月経周期、喫煙に関するストレス低減の効果であり、(公社)日本学校保健会『保健教育推進委員会報告書』や『「授業書」方式による保健の授業』、小浜らの研究を参考にした。保健の知識問題への正答率は、30%~95%となり、教室の換気は94.4%であるのに対して、AEDの役割は22.7%であった。正答率の低い保健の知識問題には、かれらの日常経験に基づく理解と乖離がある、すなわち素朴概念を含む可能性があると推測され、意外性のある保健の教材につながると考えられた。一方で、これらの知識正答項目の合計と感情・価値・期待および保健の生活への適用についての相関は認められず、知識を有することの意味については、別途考える必要性が認められた。

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