講演情報
[10保-ポ-07]高等専門学校における一次救命処置教育の実態調査
*北 哲也1、宇野 直士2 (1. 徳山工業高等専門学校、2. 山陽小野田市立山口東京理科大学)
わが国の心肺停止からの救命率は約10%と低く、一般市民(バイスタンダー)による心肺蘇生やAEDの使用など一次救命処置(BLS: Basic Life Support)の実施率向上が課題とされている。バイスタンダーの養成に学校教育が果たす役割は大きいが、人体モデルを用いたBLS教育を実施している学校は8割にとどまり、十分とは言えない。また、学校現場の現状や課題は精査されておらず、学習機会やBLSに関する知識・技術の定着度についても不明な点が多い。本研究の目的は、全国の高等専門学校を対象としたアンケート調査を通じて、BLS教育の実態を明らかにし、学校現場における諸課題に対応可能な教育方法を検討するための基礎資料を得ることとした。調査対象は全国51校の国立高等専門学校に勤務する保健体育教員で、調査項目はBLS教育の方法(実施の有無、対象学年、時間数など)、BLS教育の環境(教材、人体モデルの保有台数など)、および具体的な教育方法やBLS教育への課題に関する自由記述とした。調査の結果、実習形式でBLS教育を実施している学校は全体の7割であった。BLS教育は特定の学年を対象に90分相当を1~2回実施されており、授業あるいは消防署に救命講習を依頼する形態が主流であった。また、人体モデルの保有台数は0台と回答した学校が最も多いことが明らかになった。心肺蘇生の技術は講習後の時間経過とともに低下するため、定期的な学習機会の必要性が指摘されているが、学校現場における道具や時間の不足から十分な学習機会の確保は困難であると推察された。一方、自由記述では「各学年で実施した方がよい」「学校全体で取り組むべき」といった回答が多く、教員はBLS教育の重要性を強く認識していることが明らかとなった。今後は、時間や教材の問題を解決できる安定した教育環境と、学習効果を定着させるための新たな教育方法を構築する必要がある。
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