講演情報

[S-1]高齢保存期慢性腎臓病患者の透析導入と社会的孤立との関連:単施設前向きコホート研究

*田畑 吾樹1、矢部 広樹2、加藤木 丈英1、三嶽 侑哉1、大野 隼汰1、山口 智也3、藤井 隆之4 (1. 聖隷佐倉市民病院 リハビリテーション室、2. 聖隷クリストファー大学リハビリテーション学部 理学療法学科、3. 浜松医科大学医学部附属病院 リハビリテーション部 、4. 聖隷佐倉市民病院 腎臓内科)
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キーワード:

保存期CKD、社会的孤立、透析導入

【はじめに】高齢保存期CKD患者の透析導入はQOLの低下や医療費の増大に繋がる可能性があり,その予防は重要な課題である.しかしながら,高齢保存期CKD患者の透析導入に関連する因子について,先行研究で報告されている身体機能や栄養状態に加えて,社会的孤立も踏まえて十分に検討されていない.本研究の目的は,高齢保存期CKD患者を対象に透析導入に関連する因子を検討することである.
【方法】対象は当院のCKDの教育目的で入院した65歳以上の保存期CKD患者165例とした.透析導入の有無は,カルテにて追跡終了期間まで調査した.社会的孤立の指標は日本語版Lubben Social Network Scale短縮版(LSNS-6)を測定し,12点未満を社会的孤立と定義した.その他として,患者特性,独居の有無,配偶者の有無,同居人数,身体機能(握力,SPPB,快適歩行速度,6分間歩行距離),栄養指標 (GNRI),血液データ(Alb,BUN,Cr,eGFR,Na,K,Hb,CRP)を測定した.透析導入の有無の 2 群間の比較には,χ²検定と対応のないt検定,Mann-WhitneyのU検定を用いた.社会的孤立とイベント発生率の比較には,Kaplan-Meier法とLog-rank検定を用いた.さらに,透析導入に関連する因子として,Model1は年齢,性別,BMI,喫煙歴,糖尿病,Model2はeGFR,Hb,CRP,GNRIで調整した多変量Cox回帰分析を実施した.
【結果】観察日数の中央値は726日であり,期間中57 例(34.5%)に透析導入を認めた. 2群間で有意差を認めた項目は,LSNS-6,BMI,Alb,BUN,Cr,eGFR,Hb,GNRIであった(p<0.05).Kaplan-Meier 法とLog-rank検定の結果,社会的孤立と透析導入との関連を認めた(p<0.05).多変量Cox回帰分析の結果,交絡因子を調整した後も社会的孤立は透析導入と有意な関連を示した(HR=1.94,95%CI=1.129-3.325,p<0.05).
【結論】高齢保存期CKD患者の透析導入の予防には,社会的孤立のスクリーニングや社会参加の場の創出,地域資源・公的サービスなどの情報提供の重要性が示唆された.

倫理的配慮:
本研究は聖隷佐倉市民病院の倫理委員会の承認のもと,患者には口頭および書面にて説明し,同意を得て実施した(承認番号:2024020号).

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