講演情報

[O-2-2]高脂肪食由来肥満マウスに伴う骨格筋毛細血管の周皮細胞異常に対する交流磁場の予防効果

*中西 亮介1,2、刑 吉昊2、田中 雅侑2、田中 稔2、前重 伯壮2、藤野 英己2 (1. 神戸国際大学リハビリテーション学部理学療法学科、2. 神戸大学保健学研究科)
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キーワード:

肥満、毛細血管周皮細胞、交流磁場

【はじめに、目的】
糖尿病のリスク因子として知られる肥満は骨格筋の毛細血管構造を破綻させ、微小循環障害を悪化させることが報告されている。毛細血管は主に内皮細胞とそれを支持する周皮細胞から構成されており、周皮細胞の欠損は血管構造の安定性低下と機能障害を引き起こす。このために周皮細胞の保護は微小循環障害の予防における重要な戦略と考えられる。交流磁場は骨格筋の血流を促進することが報告されており、血管構造に対しても直接的または間接的に影響を及ぼす可能性がある。そこで本研究では、交流磁場刺激が毛細血管の周皮細胞保護に及ぼす影響を検討した。
【方法】
4週齢のC57BL/6J雄性マウスを1)標準食群、2)標準食+交流磁場群、③高脂肪食群、④高脂肪食+交流磁場群の4群に分類した。交流磁場は60Hz、最大磁束密度180mTのデバイス(Hokoen社製)を用いて1日8時間、腹側より照射した。実験終了後に腓腹筋を摘出し、免疫組織化学染色(CD31, NG2)を行い、周皮細胞被覆率を算出した。さらにRT-PCRにて骨格筋内炎症マーカー(TNF-α, IL-6)およびWestern blotにて毛細血管関連因子(ANG-1, ANG-2, Tie2, TRPV1, PLIN2, VEGF, Flk-1, TSP-1)を評価した。統計処理は二元配置分散分析を行い、有意差が認められた場合はTukey多重比較検定を実施した。有意水準は5%とした。
【結果】
高脂肪食群群では炎症性サイトカインmRNAの発現が有意に増加し、血管増殖因子であるANG-1/Tie2比の低下および周皮細胞の被覆率減少が認められた。一方、高脂肪食+交流磁場群では刺激応答性のカチオンチャネルとして知られるTRPV1の上昇に加え、炎症性マーカーの発現が有意に抑制された。さらにANG-1/Tie2比と周皮細胞被覆率の減少が抑制された。
【結論】
交流磁場刺激の照射は肥満状態の骨格筋でTRPV1の発現量増加を介して炎症抑制と血管増殖因子の発現低下の抑制に寄与した。その結果、周皮細胞被覆率の低下を抑制する可能性が示唆された。本研究の結果から肥満に伴う血管不安定性に対する新たな理学療法介入の可能性を示唆するものであり、本分野における介入戦略の一助となることが期待される。

倫理的配慮:
本研究は神戸大学動物実験委員会の承認を得て実施した(承認番号:P180802)。

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