講演情報

[12-1200-2add]新規インソール作成法と足部テーピングの運動学的検証— 圧力分布および歩行動作解析に基づいて —

渡部 祥輝 (東京工科大学 医療保健学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻)
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2007年:新潟医療福祉大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 卒業
2021年:電気通信大学大学院 情報理工学研究科 情報学専攻 博士後期課程 修了 (工学)
職歴
2018年:助教(東京工科大学 医療保健学部 リハビリテーション学科 理学療法学専攻)
2022年: 専任講師(同上)
 本発表では、保存療法の選択肢として頻用されるテーピング療法と足底挿板療法に着目し、主要な手法間の比較検討を行うことを目的とする。具体的には、テーピングにおいては「Low-Dye法」と「キネシオテーピング法」を、足底挿板においては「カスタムメイド」と「セミカスタム(即時成形等)」を取り上げ、それぞれのバイオメカニクス的効果、除痛効果、快適性、および費用対効果の観点から既存の知見を概説し、臨床における最適な治療戦略の構築に向けた考察を行う。まずテーピング療法について、非伸縮性テープを用いるLow-Dye法は、その物理的な剛性により、荷重下における足部アライメントの強制的な補正と、足底圧の即時的な再配分に優れた特性を持つとされる。一方で、時間の経過や運動負荷に伴う矯正力の減衰、および皮膚への機械的ストレスが課題として挙げられる。 対して、伸縮性テープを用いるキネシオテーピング法は、物理的な固定力においてはLow-Dye法と異なる挙動を示すものの、独自の作用機序が期待されている。また、装着時の快適性や可動域の確保、皮膚トラブルのリスク管理といった側面において優位性が示唆されており、患者のQOLを維持しながらの継続的な介入に適した特性を有していると言える。次に足底挿板療法について検討する。個々の足部形状に基づき石膏等で採型を行うカスタムメイドインソールは、解剖学的な適合性と運動制御機能において最も高い水準にあると考えられ、糖尿病足病変の予防や重度のアライメント異常に対する厳密な免荷・誘導が必要な症例において、その有用性は強固なエビデンスにより支持されている。しかし、作製にかかるコストや期間、専門的な設備・技術の必要性は、導入への障壁となり得る。 一方、既製品をベースとしたセミカスタムや即時成形タイプのインソールは、近年その素材や形状技術が進歩しており、カスタムメイドに比して安価かつ迅速に処方が可能である点が最大の利点である。全ての症例に対してカスタムメイドが必須であるか否かについては議論の余地があり、症状の重症度や活動レベル、経済的背景によっては、セミカスタム製品が費用対効果の高い現実的な選択肢となり得る可能性がある。本発表では、これらの「臨床的理想」と「実用的妥当性」のバランスについても言及する。

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