講演情報

[12-1520-2add]臨床研究の側面から

松沢 良太 (兵庫医科大学 リハビリテーション学部 理学療法学科 准教授)
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2011年:さがみ循環器クリニック 入職
2014年:北里大学病院リハビリテーション部 入職
2019年:兵庫医科大学リハビリテーション学部 講師
2025年:兵庫医科大学リハビリテーション学部 准教授(現在に至る)

超高齢化と慢性疾患の複合化により、理学療法のニーズは多様化・高度化している。一方で、臨床研究は依然として、外的妥当性の不足、エビデンスと現場との乖離、再現性・透明性の欠如といった課題を抱える。こうした課題を克服し、安全で効果的かつ客観性のある理学療法介入を広く実装するには、現場発の臨床データを「収集し、還元する」プラットフォームが必要である。我々は末期腎不全患者を対象にした単施設コホートを起点とし、段階的に施設数を拡大してきた。2024年にはTHRIVE-D(Transformative Health through Rehabilitation, Initiative, Vitality, and Exercise in Dialysis)研究を立ち上げ、複数の協力機関から約1,500例の症例データを収集・還元できる仕組みの構築を進めている。本プラットフォームの構築には、①参画施設・対象者の協働、②先行研究レビューに基づく共通収集項目とCase Report Formの設計、③倫理委員会の承認、④Electronic Data Captureの構築と運用、⑤データの入力体制、⑥定期的なチームミーティングの運営、⑦研究費の確保、⑧成果発表のノウハウが不可欠である。各機関で同一疾患・領域の小規模チームを編成し、共通の収集データをデータベースへ入力する習慣づけから着手することが、最初の一歩となる。とりわけ「どういったデータを収集するか」は研究機関の強みや先行研究レビューを踏まえ、研究メンバー内での繰り返しのディスカッションを通じて選定する必要がある。こうした取り組みの一つ一つが未来のあるべき理学療法研究の実践につながり、ひいては現場での理学療法実践を下支えする。本講演では、多施設共同研究をゼロから立ち上げた経験を共有し、未来に向けた理学療法学研究のあるべき姿について考えたい。本セッションが、参加者各位の臨床研究の推進と現場実装の加速に資する一助となれば幸いです。

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