講演情報
[O-1-3]糖尿病対応のコンフォートシューズが歩行中の最大足底圧と身体動揺性に与える影響
*鈴木 啓介1、小池 孝康1、金刺 修平2、渡辺 伸一1、大武 聖3 (1. 岐阜保健大学 リハビリテーション学部 理学療法学科、2. JCHO湯河原病院 リハビリテーション科、3. 東京保健医療専門職大学 リハビリテーション学部 理学療法学科)
キーワード:
靴、足底圧、動揺性
【はじめに、目的】
糖尿病足病変の原因の一つとして、歩行中の最大足底圧が高いことが知られている。これに対応するため、最大足底圧の軽減を目的とした糖尿病対応のコンフォートシューズ(以下、糖尿病靴)が開発されており、足病変予防への効果が報告されている。しかし、歩行時の身体動揺性に与える影響は明らかでなく、処方時の安全性評価が求められている。そこで本研究では、糖尿病靴が歩行中の最大足底圧および身体動揺性に与える影響を明らかにすることを目的に検討を行った。
【方法、あるいは症例】
健常成人40名(年齢21.0±0.2歳、身長166.5±7.8cm、BMI 25.8±1.6kg/m²)を対象に、履き慣れた運動靴と糖尿病靴の2条件で、自己選択速度による10m歩行テストを実施した。最大足底圧はインソール型足圧計を用いて左右共に7部位(母趾〜踵)を測定した。身体動揺性は第3腰椎棘突起部に貼付した3軸加速度計で測定し、RMS(Root Mean Square)を速度の2乗値で補正し、左右・上下・前後・全方向合算の4指標を算出した。統計解析は、2条件間の比較に対応のあるt検定を、最大足底圧に関しては歩行速度と歩幅を共変量とした共分散分析を行った。なお、有意水準は5%とした。
【結果】
糖尿病靴使用時には、運動靴に比べて有意に歩行速度が低下し(1.26±0.30 vs. 1.31±0.23 m/s)、歩幅も縮小した(69.0±12.1 vs. 71.5±8.6 cm)。最大足底圧は母趾および踵部において有意に低下し(例:右踵 17.04±3.17 vs. 20.91±5.09 N)、共分散分析においても左右の踵で有意差が認められた(p<0.05)。RMSの結果では、すべての方向で糖尿病靴において有意に動揺性が増加し、全方向合算でのRMSは4.24±1.40 vs. 3.70±0.71 m/s²であった。
【結論】
糖尿病靴は、歩行中の最大足底圧を有意に軽減する一方で、身体動揺性の増加を引き起こす可能性が示唆された。これは、インソールに使用される高クッション性素材が、足底からのフィードバックを低下させ、姿勢制御能力を一時的に低下させることに起因すると考えられる。したがって、糖尿病靴の処方に際しては、足底圧の軽減効果のみならず、歩行安定性に対する影響についても十分な評価を行い、使用者の運動安全性を確保することが重要である。
倫理的配慮:
対象者には本研究の趣旨、目的、測定内容を説明文書と口頭にて説明し、書面にて同意を得た。また、本研究は岐阜保健大学の倫理審査を受け、承認を得ている(倫理番号:202311)。
糖尿病足病変の原因の一つとして、歩行中の最大足底圧が高いことが知られている。これに対応するため、最大足底圧の軽減を目的とした糖尿病対応のコンフォートシューズ(以下、糖尿病靴)が開発されており、足病変予防への効果が報告されている。しかし、歩行時の身体動揺性に与える影響は明らかでなく、処方時の安全性評価が求められている。そこで本研究では、糖尿病靴が歩行中の最大足底圧および身体動揺性に与える影響を明らかにすることを目的に検討を行った。
【方法、あるいは症例】
健常成人40名(年齢21.0±0.2歳、身長166.5±7.8cm、BMI 25.8±1.6kg/m²)を対象に、履き慣れた運動靴と糖尿病靴の2条件で、自己選択速度による10m歩行テストを実施した。最大足底圧はインソール型足圧計を用いて左右共に7部位(母趾〜踵)を測定した。身体動揺性は第3腰椎棘突起部に貼付した3軸加速度計で測定し、RMS(Root Mean Square)を速度の2乗値で補正し、左右・上下・前後・全方向合算の4指標を算出した。統計解析は、2条件間の比較に対応のあるt検定を、最大足底圧に関しては歩行速度と歩幅を共変量とした共分散分析を行った。なお、有意水準は5%とした。
【結果】
糖尿病靴使用時には、運動靴に比べて有意に歩行速度が低下し(1.26±0.30 vs. 1.31±0.23 m/s)、歩幅も縮小した(69.0±12.1 vs. 71.5±8.6 cm)。最大足底圧は母趾および踵部において有意に低下し(例:右踵 17.04±3.17 vs. 20.91±5.09 N)、共分散分析においても左右の踵で有意差が認められた(p<0.05)。RMSの結果では、すべての方向で糖尿病靴において有意に動揺性が増加し、全方向合算でのRMSは4.24±1.40 vs. 3.70±0.71 m/s²であった。
【結論】
糖尿病靴は、歩行中の最大足底圧を有意に軽減する一方で、身体動揺性の増加を引き起こす可能性が示唆された。これは、インソールに使用される高クッション性素材が、足底からのフィードバックを低下させ、姿勢制御能力を一時的に低下させることに起因すると考えられる。したがって、糖尿病靴の処方に際しては、足底圧の軽減効果のみならず、歩行安定性に対する影響についても十分な評価を行い、使用者の運動安全性を確保することが重要である。
倫理的配慮:
対象者には本研究の趣旨、目的、測定内容を説明文書と口頭にて説明し、書面にて同意を得た。また、本研究は岐阜保健大学の倫理審査を受け、承認を得ている(倫理番号:202311)。
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