講演情報

[P-4-2]2型糖尿病患者における糖尿病合併症の有無と筋の質の関係

*矢部 拓哉1、櫻井 吾郎1、吉田 信也1、八幡 徹太郎2 (1. 金沢大学附属病院リハビリテーション部、2. 金沢大学附属病院リハビリテーション科)
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キーワード:

合併症、筋力、筋の質

【目的】
糖尿病(DM)患者では筋の質(MQ)の低下が報告されており,骨格筋量が保たれていても,筋力低下を来すことがある.このMQについて,合併症(網膜症,腎症,末梢神経障害(DPN))との関連は不明である.本研究の目的は,2型DM患者における合併症とMQの関連を明らかにすることである.
【方法】
2018年~2021年に当院へ教育入院した2型DM患者のうち、整形外科疾患,神経疾患,浮腫(BIA法で細胞外水分比≧0.4)のない85名(男:女 = 46:39,年齢59.4±15.4歳,BMI 28.6±7.9㎏/m2,罹病期間12.3±11.1年,HbA1c 8.9±2.1 %)を対象とした.評価項目は年齢,BMI,罹病期間,HbA1c,骨格筋量および骨格筋指数(SMI),網膜症・腎症・DPNの有無とした.筋力は握力(㎏),膝伸展筋力体重比(KEF,kgf/㎏)を測定した.MQは,先行研究を参考に握力/上肢骨格筋量(上肢MQ),膝伸展筋力/下肢骨格筋量(下肢MQ)で算出した.男女別に合併症の発症数で,患者特性,身体機能を比較した.
【結果】
合併症なしを対象群として,合併症の発症数が増えるほど男女ともに罹病期間が長く(p=0.02,p<0.01),男性で握力(p=0.04),女性で握力(p<0.01),KEF(p<0.01)が低下する傾向を認めた.特に,合併症を3因子有する患者では,日常生活動作に影響が生じうる水準まで筋力低下が生じていた(男性で握力:24.8±2.8㎏,KEF:43.3±9.8kgf/kg,女性で握力:16.6±4.9㎏,KEF:18.8±3.5kgf/kg).MQについては,男性では合併症の発症数に関わらず,全群で上下肢MQの低下を認めなかった.一方で,女性では合併症2因子以上で上肢MQ(p=0.03),3因子以上で下肢MQ(p<0.01)が有意に低下した.SMIは,男女ともに合併症の発症数による有意な変化がみられなかった.
【結論】
女性2DM患者では,合併症の存在がMQ低下と関連し,筋力低下に影響する可能性が示唆された.また,合併症の累積によりその影響は増大する傾向にあった.

倫理的配慮:
ヘルシンキ宣言に基づき,患者から口頭・書面にて同意を得た.本研究は金沢大学医学倫理審査委員会の承諾を得て実施した(承認番号:3148).

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