講演情報

[P-6-4]糖尿病を合併する心臓血管外科術後患者の足病変発症リスクを踏まえた装具療法の経験:早期診断と多職種連携の重要性 (症例報告)

*筆保 健一1、坂上 譲1、蜷川 晃希1、安田 雅則1、土井 あかね1、前田 和人2、福原 慎二2、藤阪 智弘3、西野 誠一4、佐浦 隆一1 (1. 大阪医科薬科大学病院リハビリテーション科、2. 大阪医科薬科大学病院心臓血管外科、3. 大阪医科薬科大学病院循環器内科、4. 川村義肢株式会社教育・技術支援部)
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キーワード:

糖尿病性足病変、神経障害、装具療法

【はじめに】包括的高度慢性下肢虚血 (CLTI) の生存率は極めて悪く、糖尿病性足潰瘍は見過ごされやすい診断基準の一つである。今回、冠動脈バイパス術を施行した患者に対し、退院後の生活を踏まえ足底装具を作製し良好な経過を得たので、糖尿病性足病変の診断および装具療法ついて報告する。【症例】63歳男性、沖縄の離島に独居、サンダル型履物を常用していた。2型糖尿病、高血圧、脂質異常症、内頸動脈狭窄症の既往があった。熱傷による全足趾潰瘍で受診したところ、冠動脈3枝病変を認め、精査加療目的に本院の循環器内科に受診となった。下肢虚血も疑われたがABI右1.09/左1.34、SPP右75/左66mmHgであった。下肢血管造影で両側膝下動脈以遠に高度狭窄・閉塞を認めたものの、前脛骨動脈により血行は維持されていた。その後、心臓血管外科に入院し冠動脈バイパス術を施行した。術後理学療法開始時、両側鉤爪趾 (Claw Toe) と潰瘍瘢痕を認めた。退院時にはMichigan Neuropathy Screening Instrument 6点、Ipswich Touch Test 1点で糖尿病性末梢神経障害を認めた。退院後は離島に戻るが、兄妹の住む大阪に転居し就労を希望した。下肢虚血はCLTIには該当せず、WIfI分類ではClinical stage1の分類となる。しかし本症例は過去に生じた糖尿病性末梢神経障害による潰瘍形成や足部の変形、血管病変、重度併存症によって再発リスクは高いと判断した。【結果】転居後は靴を履いての身体活動の増加によって、血管病変ではなく趾変形と糖尿病性末梢神経障害による潰瘍形成リスクが想定されたため、リハビリテーション科医、義肢装具士を交えて協議し、第1・3・5中足骨頭への足底圧上昇が確認されたことより、化学架橋ポリエチレンフォーム (プラスタゾート®) 製の足底装具を作製した。退院3ヶ月後、胼胝・潰瘍形成なく活動性は維持された。【結論】心血管疾患に対する術後理学療法場面で糖尿病足病変のリスクを予測できた。糖尿病性末梢神経障害による足部の変形や知覚低下は見過ごされやすく、軽微な外傷から切断術に至る症例も少なくない。そのため、糖尿病を合併する種々の疾患では、常に足部外観の変化や知覚低下の有無を念頭に置き、潰瘍形成の予防のため、多職種協働が重要である。

倫理的配慮:
本症例報告については、患者本人に説明を行い、学会発表および抄録掲載について書面にて同意を得た。

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