講演情報

[21-1450-3add]脳卒中関連のサルコペニア対策としての身体活動
講師:木村 鷹介(東洋大学 生命科学部 生体医工学科 准教授)

木村 鷹介 (東洋大学 生命科学部 生体医工学科 准教授
日本栄養・嚥下理学療法学会 評議員
日本老年療法学会 監事)
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2011年:JCHO東京新宿メディカルセンター(旧東京厚生年金病院)
2021年:関東学院大学理工学部健康学系
2024年:東洋大学生命科学部生体医工学科

脳卒中者は、運動麻痺や嚥下障害に伴う低栄養などにより、サルコペニアを発症する者が多いことが知られている。近年は高齢脳卒中者が増加しており、発症前から既にサルコペニアを有する症例も少なくない。従来、回復期リハビリテーションにおいては、自立歩行の再獲得が主要な目標とされてきた。しかし、私たちの先行研究では、回復期病棟退院時に骨格筋量が不十分な患者は、退院後に歩行自立度が低下しやすいことが示された(Tanaka S, et al. Clin Neurol Neurosurg, 2024)。すなわち、自立歩行を達成することに加え、十分な筋量を回復させることもリハビリテーションにおいて極めて重要である。
 回復期脳卒中者の骨格筋量・筋質の改善には身体活動量が関連し、軽強度以上の総身体活動時間が関連することが報告されている(Kimura Y, et al. Disabil Rehabil, 2024)。さらに、十分な蛋白質摂取も筋量や筋質の改善に不可欠であり(Tanaka S, et al. Brain Impairment, 2024)、栄養管理と身体活動の両面からの介入が求められる。
 一方で、私たちが現在実施している多施設共同研究「J-SPURT Study」では、回復期リハ病棟における脳卒中者の身体活動量が極めて低いことが明らかとなっている。リハ時間を含めても、日中の約80%を座位で過ごしており(竹内,他.運動疫学研究,早期公開)、歩行自立群であっても車椅子自走群と総活動時間の割合に大きな差がみられないという深刻な現状がある。脳卒中者の身体活動をどのように促進するかは容易な課題ではないが、活動量の「見える化」によるスタッフ間での情報共有や、教育的介入、環境整備などを複合的に行うことが重要と考えられる。さらに、軽症例に対してはICTを活用した取り組みも有効である可能性があり、現在、神経理学療法学会戦略的課題解決委員会において検証を進めている。
 本シンポジウムでは、これらの知見をもとに、脳卒中関連サルコペニア対策としての身体活動の意義について共有し、皆さまとともに今後の課題や展望について意見を交わしながら、より良い実践や研究の方向性を考えていきたい。

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