講演情報

[SR-4]グリコアルブミンによる血糖コントロールと透析中運動療法の身体機能改善効果の関連:多施設共同研究

*松井 明由奈1,2、矢部 広樹3、髙橋 蓮1,4、日比野 貴志1、石川 英昭5、森山 善文6、山田 哲也7 (1. 医療法人偕行会 偕行会城西病院 技術部リハビリ課、2. 聖隷クリストファー大学大学院 リハビリテーション科学研究科 博士前期課程、3. 聖隷クリストファー大学 リハビリテーション学部 理学療法学科、4. 聖隷クリストファー大学大学院 リハビリテーション科学研究科 博士後期課程、5. 医療法人偕行会 偕行会城西病院 腎臓内科、6. 医療法人偕行会 名古屋共立病院 ウェルネスセンター、7. 医療法人偕行会 法人本部)
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キーワード:

グリコアルブミン、透析中運動療法、身体機能

【はじめに、目的】
透析中運動療法は血液透析患者における身体機能改善の有効な手段として確立されている。しかし、高血糖の持続は慢性炎症や末梢神経障害を開始てその効果を減弱させる可能性がある。本研究は、糖尿病を合併した血液透析患者を対象に、グリコアルブミン(GA)で評価した血糖コントロール状態が透析中運動療法による身体機能改善効果に及ぼす影響を検討することを目的とした。
【方法】
対象者は外来透析クリニック22施設に通院する糖尿病合併HD患者で、透析中運動療法の実施者とした。ベースラインのGA値に基づき、良好群(≦15.2)、境界群(15.2ー18.5)、不良群(≧18.5以上)の3群に分類した。介入は下肢レジスタンス運動を、6か月間実施した。評価項目は、握力、等尺性膝伸展筋力(IKES)、)、Short Physical Performance Battery(SPPB)、10 m歩行速度とし、介入前後に測定した。統計解析はintention-to-treat(ITT)原則に従い、良好群を基準とした改善量(Δ)の群間比較を線形混合効果モデルで行った。有意水準は危険率5%とした。
【結果】
対象は236例(良好群17例、境界群64例、不良群155例)であった。群間比較の結果、握力の改善は良好群に比べて境界群[Δ差:-1.98(95%CI: -3.86 to -0.11)]および不良群[Δ差:-1.79(95%CI: -3.57 to -0.07)]で有意に小さかった(p<0.05)。一方、IKES、SPPB、10m歩行速度は群間比較で有意差を認めなかった。
【結論】
本研究は運動療法の対象を下肢に限定したが、透析中運動療法は全身的効果を有することが知られている。高血糖の持続は、α運動ニューロン障害を介して神経-筋伝達を阻害し、筋力の改善効果を減弱させる可能性があるため、血糖コントロールが不良あるいは境界の患者は、透析中運動療法における握力の改善効果が有意に小さかった可能性がある。一方で、下肢筋力や歩行能力に関しては、透析中運動療法による直接的な刺激が強く、血糖コントロールの影響が相殺された可能性がある。糖尿病合併HD患者における身体機能改善を最大化するためには透析中運動療法の継続とともに血糖コントロールの最適化を図ることが重要である。

倫理的配慮:
本研究は、名古屋共立病院病院倫理委員会の承認を得て実施した。(approval number K145-01)

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