講演情報

[22-1410-1add]多様化する糖尿病医療とCDEJの役割

宇都宮 一典 (日本糖尿病療養指導士認定機構 理事長
慈生会野村病院内科
東京慈恵会医科大学 名誉教授)
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1979年:東京慈恵会医科大学卒業
1985年:同大大学院修了
1996年:東京慈恵会医科大学内科学講座 第3講師
2002年:東京慈恵会医科大学糖尿病・代謝・内分泌内科 准教授
2010年:同上 主任教授
2015年:東京慈恵会医科大学内科学講座 総括責任者
2016年:東京慈恵会医科大学 医学科長
2019年:東京慈恵会医科大学総合健診・予防医学 センター長
    同上 臨床専任教授
2020年:日本糖尿病療養指導士認定機構(CDEJ) 理事長
2022年:医療法人財団慈生会野村病院常勤顧問・東京慈恵会医科大学 名誉教
2型糖尿病は遺伝的な素因を基盤として、膵島におけるインスリン分泌不全と内臓脂肪型肥満によるインスリン抵抗によって発症する。我が国における糖尿病の増加の要因には、食生活の変容に伴った内臓脂肪型肥満があり、インスリン抵抗性が大きく関与している。加えて、患者の高齢化によって、加齢に伴う臓器障害が重なり、多彩な病像を呈するに至っている。糖尿病治療の目的は、合併症の発症・進展阻止と健康寿命の延伸にあることは言うまでもない。そのためには、かかる患者の病態、年齢構成ならびに背景をなす生活習慣の多様性を踏まえ、治療法の個別化が必要である。真の個別化を実践するためには、患者のニーズを的確に把握する専門職としての技量が問われるのである。
 CDEJの活動の場とその役割は大きく変貌しようとしている。糖尿病をはじめとする慢性疾患の診療は、地域包括ケアシステムの中核に位置付けられ、専門病院から患者宅まで、多様な医療現場に出ていかなければならない。しかも、患者に近づくほど、医師の手から離れ、自身の裁量で決しなければならないことが増えるのである。社会はそれを求めているとも言える。この中にあって、理学療法士CDEJが果たすべき役割は大きい。最近の統計によれば、我が国の外来・入院患者に65歳以上の高齢者の占める割合が増え、それとともに在宅医療を受ける患者数が急増している。骨折、脳血管疾患、認知症が要介護に陥る原因疾患にあげられるが、いずれも糖尿病が大きなリスクになっている。糖尿病を併せ持ち、これらの原因からリハビリテーションの対象となる患者は、増加の一途を辿るであろう。理学療法士CDEJには、併存疾患の予防から身体機能の回復まで、幅広い領域での活躍が期待される。一方、そのためには、リハビリテーション専門医と糖尿病専門医間の円滑な連携が必要であり、他の職種にはない事情として考慮しなければならない。
 CDEJのライセンスは、こうした責務に耐えうることを示す証となるものである。これからの社会的要請に応えることのできるCDEJの育成が、認定機構の使命と考えている。

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