講演情報

[22-1410-3add]高齢者糖尿病のケアにおける多職種連携の在り方―管理栄養士の立場から

宮原 摩那子 (自治医科大学附属さいたま医療センター 栄養部 主任管理栄養士)
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2001年:自治医科大学附属病院 栄養部(現 臨床栄養部)
2017年:自治医科大学附属さいたま医療センター 栄養部
高齢者糖尿病においても食事療法は高血糖の是正と脂質異常症と肥満の是正に有用であり、低栄養、過栄養・肥満を評価し、適正なエネルギーを設定し、バランスを図る食事をすることが望ましいとされています。高齢者の低栄養は、体重減少と食事摂取量の減少などから評価法を活用して見出し、意図しない体重減少を認めた場合には、①エネルギー摂取不足、②活動量の増加、③著しい高血糖、④代謝が亢進するような疾患として悪性疾患、感染症、関節リウマチ、甲状腺機能亢進症、歯の問題などが潜んでいないか、精査が必要とされます。高齢者の過栄養を反映する肥満はBMIで判断しますが、高齢者では身長が減少するためにBMIが実際より高値となる場合があること、心不全や腎不全の合併で浮腫をきたしているとBMIで体脂肪を判定することは困難な場合があります。また、高齢者では肥満にサルコペニアが合併したサルコペニア肥満が増える事から、BMI単独による過栄養や肥満の評価は難しい場合が多く、個別に判断する必要があります。糖尿病におけるフレイルは死亡率や入院といった臨床転帰に加え、糖尿病の合併症に関連するとの報告もあることから、高齢者糖尿病における食事療法はフレイル対策も重要です。フレイルの原因として栄養素の摂取不足があげられます。高齢者糖尿病に栄養素の摂取不足の是正においては、ただ不足する栄養素を示し、食べることを促すだけでは、改善が難しいケースを多く体験します。活動量の低下や消化能力の低下、便秘などが原因による食事摂取量の減少や健康情報や併存疾患の術前の体重・血糖管理を目的とした自己流の食事療法など様々な理由で食事量が減り栄養素の摂取不足に陥ります。また、買い物や調理などの家事の負担や、咀嚼・嚥下能力の低下といったオーラルフレイル、認知機能の低下なども食事摂取量減少に影響して栄養素の摂取不足を引き起こします。個々に応じた栄養管理計画の作成には、高齢者特有の背景に加え、病態、併存疾患、薬物療法、ADL、認知機能、家族や地域のサポートの有無、社会経済的要因など、多職種での情報共有が不可欠です。糖尿病をもつ高齢者が食生活を楽しみ、健康寿命の延伸につながる栄養サポートを実施するにあたり、高齢者糖尿病を支える地域や多施設での多職種連携が進むことを期待したいと考えています。

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