講演情報

[22-1410-5add]高齢者糖尿病のケアにおける多職種連携の在り方―理学療法士の立場から

井垣 誠 (公立豊岡病院組合立豊岡病院 リハビリテーション技術科 副課長
一般社団法人 日本糖尿病理学療法学会 理事長)
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1991年:神野病院
1992年:公立豊岡病院組合
2014年:同豊岡病院日高医療センター リハビリテーション技術科長
2021年:同豊岡病院 リハビリテーション技術科 副科長

高齢者糖尿病は、加齢に伴う身体機能や認知機能の低下、多疾患併存、社会的孤立などが影響し、血糖マネジメントだけでなくQOLにも大きな影響を与える。したがって、単に薬物療法に依存するのではなく、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、理学療法士、ソーシャルワーカーなどによる多職種連携が求められる。理学療法士は、運動療法を中心に身体機能面から患者の自立支援を担う役割になる。具体的には筋力、バランス機能、運動耐容能などを評価し、個々の身体能力と疾患特性に基づいた安全な運動プログラムを立案する。高齢者では糖尿病合併症の罹患に加え、サルコペニアや骨関節疾患、心疾患などの併存を考慮し、低強度かつ継続可能な運動を中心に指導する必要がある。また、運動実施に対する心理的・社会的要因にも配慮し、動機づけ支援や生活環境調整を行う。
 他職種との連携として、医師とは運動制限や治療方針の共有、看護師とはセルフケア状況や血糖変動への対応を協議する。管理栄養士とは身体活動量と食事摂取量のバランス調整、筋肉量評価を共有しその対策を協議、薬剤師とは薬物療法との相互作用や低血糖リスクへの対応を情報交換する。また、ソーシャルワーカーとは地域での運動機会や支援体制の構築を共同で進める。これらの連携は、カンファレンスや電子カルテを活用した情報共有体制の整備により効果的に行うことができる。
 理学療法士は単なる運動指導者ではなく、生活全体を見据えた「活動的な生活」の実現を支援することが重要であると考える。転倒予防、歩行能力維持、日常生活動作能力の改善を通じて身体活動量を確保することは、血糖マネジメントおよびQOLの向上に寄与する。運動療法メニューを提示してその実践を促すだけでは上手くいかないことをよく経験する。家屋やその周辺環境も把握し、本人の役割を踏まえて動く必要のある状況を設定することが理想なのかもしれない。高齢者糖尿病のケアにおいて、理学療法士は身体機能と生活支援をつなぐ役割を担う。他職種が専門性を尊重し合い、共通目標のもとでチームとして連携することがより質の高い高齢者糖尿病のケアの実現につながると思われる。


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