講演情報

[P-8-5]外傷性クモ膜下出血にて回復期リハ病院退院後、外来透析クリニックでの透析前運動療法がADL・QOL改善につながった1症例

*木曽 貴紀1、積山 和加子2、坂井 正宙1、橋本 昌美1 (1. はしもとじんクリニック、2. 県立広島大学 保健福祉学部 保健福祉学科 理学療法学コース)
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キーワード:

腎臓リハビリテーション、透析患者、外来透析クリニック

【はじめに】
透析患者は様々な合併症により入院リスクが高く、退院後も継続的なリハが必要であるが、透析クリニックに理学療法士が勤務している割合は1.8%と非常に少ない。今回、外傷性くも膜下出血にて回復期リハ病院退院後、外来で透析前運動療法を実施しADL・ QOLが改善した症例の経過を報告する。
【症例】
60代後半、男性。身長162cm、DW57.8kg、BMI22。糖尿病性腎症によりX-6年透析導入。妻と二人暮らし。趣味は畑仕事(畑は自宅から2km)。ADL自立。透析日の透析実施前に運動療法30分実施していたが、X-5ヶ月、深夜自宅階段から転落。外傷性くも膜下出血、胸椎骨折、頚髄損傷、多発肋骨骨折等で急性期病院入院。入院2週間後、上肢MMT1-2、下肢MMT2、ADL全介助で回復期リハ病院へ転院し、屋内独歩、屋外杖歩行可能となり自宅退院。X日、当院逆紹介。要介護2、MMSE23点。入院前に比べ身体機能、ADL、活動範囲の低下あり。ニードは入院前のように畑仕事がしたい。
【経過】
退院後の透析前運動療法は入院前に実施していた筋力トレーニング、自転車エルゴメーターを低負荷から再開し漸増した。畑での作業を想定し、低い台から起立練習、バランス練習、上肢機能練習を徐々に追加した。また妻と一緒に自宅周囲の散歩や買い物の付き添いを行って活動量増加を図り、活動量は歩数計で管理した。入院前→リハ病院退院時→退院6ヶ月後の身体機能等の経過を以下に示す。DW57.8→51.6→53.2kg、握力22.6→12.1→16.9kg、膝伸展筋力(体重比)60.9→53.3→60.2%、歩行速度1.19→0.81→1.1m/秒、片脚立位21.9→3.9→29.9秒、SPPB11→7→11点、FIM124→101→115点、ADL困難感42→37→40点、LSA110→75→95点、歩数3000〜6000→1000→4000〜5000歩。入院で低下した身体機能等は6ヶ月後には概ね入院前同等に改善した。畑仕事再開に向けては、畑に行く頻度や方法(車で送迎、徒歩、自転車)を調整し、畑での作業も徐々に実施(草取り、耕運機、野菜を植える)。X+9ヶ月後に野菜の収穫が実施できた。
【結論】
本症例では外来での透析前運動療法継続がADL・ QOLの改善につながったため、退院後も透析前運動療法を継続して実施する必要性が示唆された。

倫理的配慮:
症例に十分な説明を行い、口頭および書面にて同意を得た。

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