講演情報

[P-9-1]重症単純網膜症を合併した2型糖尿病患者に対する指導経験の報告

*柿原 稔永1、片岡 弘明2、堀川 眞3 (1. 医療法人財団博仁会キナシ大林病院リハビリテーション科、2. 岡山医療専門職大学 健康科学部 理学療法学科、3. 医療法人財団博仁会キナシ大林病院 内科)
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キーワード:

重症単純網膜症、運動療法、体組成

【はじめに】
 2型糖尿病では微小血管障害として網膜症を合併することが多く,特に重症例では急激な血糖改善に伴う一過性悪化(early worsening)が問題となる.また微小循環障害により外眼筋麻痺を呈し,複視や眼球運動障害を伴って歩行や日常生活に支障をきたし,運動療法の制限要因となる.今回,重症単純網膜症および複視を有する糖尿病患者に対し,安全性に配慮した運動療法を導入し,血糖コントロールと体組成改善を得たため報告する.
【症例提示】
 50歳代女性.複視を主訴に眼科を受診し,高血糖・外眼筋麻痺・高血圧を指摘され,当院紹介となり2週間の入院加療を行った.入院時,HbA1c14.7%,血糖466mg/dL,C-ペプチド4.5ng/mLと高値.散瞳検査で軽度出血・軟性白斑・毛細血管瘤を認め,重症単純網膜症と診断された.食事は1,440kcalで制限し,インスリン頻回投与から段階的に減量・中止され,血糖降下薬・降圧薬・ビタミン製剤で退院となった.
【理学療法評価と介入】
 身長150.8cm,体重66.8kg,BMI29.4,膝伸展筋力16.7kgf/17.4kgf(体重比25.5%),骨格筋量13.3kg,体脂肪量指数13.2 kg/㎡,除脂肪量指数16.2 kg/㎡,6分間歩行320.7m.複視と網膜症に配慮し,バルサルバ型運動は回避し,セルフストレッチ・低負荷筋力訓練・リカンベント型エルゴメーターによる有酸素運動を実施した.また,生活改善のタイムスケジュール表も作成し指導を行った.
【結果】
 退院時,体重65.0kg,BMI28.6,膝伸展筋力18.9kgf/17.6kgf(体重比28.1%)へ向上.骨格筋量16.2kg,体脂肪量指数12.4 kg/㎡,除脂肪量指数16.6 kg/㎡,6分間歩行372.7mと改善を認めた.1か月後の検査でHbA1c10.8%,血糖140mg/dLと改善が得られていた.
【考察】
 重症網膜症を有する糖尿病患者に対し,運動内容と強度を適切に調整することで,安全かつ有効な運動療法が可能であると考えられた.

倫理的配慮:
本発表に関して口頭にて説明を実施し,書面での同意を得た.(当院倫理委員会承認番号:R7-008)

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