講演情報

[GP1]グラム染色が有用であった侵襲性髄膜炎菌感染症の一例

*伊藤 彩花1、井田 陽子1、田村 千尋1、本間 慎太郎1、奥山 貴洋1、荒木 光二1、宮城 博幸1、大西 宏明1 (1. 杏林大学医学部付属病院 臨床検査部)
【はじめに】Neisseria meningitidisは飛沫感染により伝播し、血液や髄液に侵入することによって侵襲性髄膜炎菌感染症を引き起こす。今回我々は、侵襲性髄膜炎菌感染症の一例を経験したので報告する。【症例】10歳代、男性。特記すべき既往はなく、寮にて集団生活をしていた。入院前日から発熱および頭痛を認め、翌日意識障害がみられたため前医に救急搬送された。前医での診察時に項部硬直も認めていたことから、細菌性髄膜炎を疑い、血液培養2セット採取後、CTRXによる抗菌化学療法を開始し、当院救急科に転院となった。来院時に採取された髄液は細胞数2251 /μL、蛋白372.5 mg/dL、糖4 mg/dLであり、Gram染色にて陰性球菌が観察され、検体到着から約30分で形態および患者背景からN. meningitidisと推定した。同時に、FilmArray髄膜炎・脳炎パネルを実施し、検体到着から約2時間後にN. meningitidis(+)と報告した。CTRXおよびVCMを投与し、その後再燃は認めず、第24病日に軽快退院となった。また、前医で採取された血液培養からもN. meningitidisが検出された。【微生物学的検査】髄液をポアメディア羊血液寒天培地M58、チョコレートⅡ寒天培地、サイアーマーチン寒天培地に分離し、5%炭酸ガス好気条件下で35℃にて18時間培養したところ、全ての培地に灰白色のコロニーの発育を認めた。発育したコロニーをMALDI-TOF MS(microflex)およびIDテストHN-20ラピッドを用いて同定検査を実施したところN. meningitisと判定され、 FilmArray 髄膜炎・脳炎パネルの結果と一致した。薬剤感受性検査はDISK法を用い、 CTRX:S、MINO:S、CPFX:S、CP:S、AZM:S、MEPM:S、ST:R であった。【考察】本症例は検体到着からGram染色の結果報告まで約30分であり、遺伝子検査の結果が出る前に起因菌の推定が可能であったことからGram染色の有用性が再認識された症例であった。そのため、適切な抗菌薬選択ができただけでなく、二次感染予防対策の早期実施に貢献できたと考えられた。侵襲性髄膜炎菌感染症は2023年頃より報告数が増加しており、国内外でβラクタム系薬およびフルオロキノロン系薬に対する抗菌薬耐性の報告が増加している。今後のN. meningitisの検出数や薬剤感受性動向に注視する必要がある。連絡先:0422-47-5511(内線:22805)