講演情報
[GP3]当院で経験したListeria monocytogenes髄膜炎の1例
*町田 菜摘1、吉田 菜穂子2、渡邉 真子1、丸子 真奈美1、服部 英典1、橋本 幸平1、八木澤 瞳1、黄 英文1 (1. 国家公務員共済組合連合会 立川病院 中央検査科 2.順天堂大学医学部 熱帯医学・寄生虫病学講座)
【症例】
80代男性。既往歴にCOPD、大動脈解離、心筋梗塞、脳梗塞、高血圧あり。前日から食欲低下があり、当日発熱、意識障害を主訴に救急搬送され入院した。入院時血液検査所(WBC12,000/µL、CRP2.46mg/dL、PCT1.68ng/mL)、胸部X線所見から肺炎と診断され、血液培養、喀痰培養採取後、SBT/ABPCが開始された。入院2日目、入院時の血液培養からグラム陽性桿菌が検出され、入院3日目、コロニー観察所見からListeria属菌疑いであることを主治医に報告した。入院4日目に髄液検査が行われ、同日髄液の遺伝子検査によりListeria monocytogenesが検出された。入院8日目に血液培養の陰性化を確認、抗菌薬は24日で終了した。
【微生物学的検査】
入院時採取した血液培養4本中1本から培養28時間で小型のグラム陽性桿菌が検出された。入院3日目、羊血液寒天培地に塗抹し35℃で培養24時間後に不完全なβ溶血、微小半透明なコロニーの発育を認め、Listeria属菌と推定した。入院4日目に採取された髄液検査は総細胞数303/μL、(多核球53/μL、単核球250/μL、蛋白172mg/dL、糖31mg/dL(血糖127 mg/dL))であり髄液塗抹検査は陰性であったが、FilmArray髄液パネルからL. monocytogenesが検出された。入院6日目、血液培養検出菌はDxM マイクロスキャン WalkAway(PC1J)を用いてL. monocytogenesと同定した。
【まとめ】
Listeria属菌の血液培養のグラム染色像は菌体が直線的な小型グラム陽性桿菌であり、本症例での血液培養グラム染色像は菌体が直線的な小型グラム陽性桿菌が主体でありListeria属菌が推察されたが、菌体がY、V字の配列をしている染色像も見られCorynebacterium属菌の可能性も考慮された。血液培養ボトル発育菌と寒天培地発育菌では発育環境が菌の形態や染色性に影響し、グラム染色像が異なることがあるため、Listeria属菌とCorynebacterium属菌との鑑別は困難とされる。このため、血液培養ボトル発育菌のグラム染色像のみで菌種を推定するには限界があり、医師への報告は慎重になるのが検査室の実情である。一方、Listeria髄膜炎は治療の介入が遅れると死亡率が高く、早期診断と適切な抗菌薬の選択が重要であるが、特異的な症状に乏しく臨床症状からの診断は困難である。本症例では、菌種確定前から検査経過の段階でListeria属菌である可能性を主治医と共有することで、早期髄液検査の実施につながり、迅速かつ正確な診断確定に貢献した。本症例を通して細菌検査室がチーム医療の一員として検査業務に取り組む重要性を再認識した。
連絡先-0425233131(内線2375)
80代男性。既往歴にCOPD、大動脈解離、心筋梗塞、脳梗塞、高血圧あり。前日から食欲低下があり、当日発熱、意識障害を主訴に救急搬送され入院した。入院時血液検査所(WBC12,000/µL、CRP2.46mg/dL、PCT1.68ng/mL)、胸部X線所見から肺炎と診断され、血液培養、喀痰培養採取後、SBT/ABPCが開始された。入院2日目、入院時の血液培養からグラム陽性桿菌が検出され、入院3日目、コロニー観察所見からListeria属菌疑いであることを主治医に報告した。入院4日目に髄液検査が行われ、同日髄液の遺伝子検査によりListeria monocytogenesが検出された。入院8日目に血液培養の陰性化を確認、抗菌薬は24日で終了した。
【微生物学的検査】
入院時採取した血液培養4本中1本から培養28時間で小型のグラム陽性桿菌が検出された。入院3日目、羊血液寒天培地に塗抹し35℃で培養24時間後に不完全なβ溶血、微小半透明なコロニーの発育を認め、Listeria属菌と推定した。入院4日目に採取された髄液検査は総細胞数303/μL、(多核球53/μL、単核球250/μL、蛋白172mg/dL、糖31mg/dL(血糖127 mg/dL))であり髄液塗抹検査は陰性であったが、FilmArray髄液パネルからL. monocytogenesが検出された。入院6日目、血液培養検出菌はDxM マイクロスキャン WalkAway(PC1J)を用いてL. monocytogenesと同定した。
【まとめ】
Listeria属菌の血液培養のグラム染色像は菌体が直線的な小型グラム陽性桿菌であり、本症例での血液培養グラム染色像は菌体が直線的な小型グラム陽性桿菌が主体でありListeria属菌が推察されたが、菌体がY、V字の配列をしている染色像も見られCorynebacterium属菌の可能性も考慮された。血液培養ボトル発育菌と寒天培地発育菌では発育環境が菌の形態や染色性に影響し、グラム染色像が異なることがあるため、Listeria属菌とCorynebacterium属菌との鑑別は困難とされる。このため、血液培養ボトル発育菌のグラム染色像のみで菌種を推定するには限界があり、医師への報告は慎重になるのが検査室の実情である。一方、Listeria髄膜炎は治療の介入が遅れると死亡率が高く、早期診断と適切な抗菌薬の選択が重要であるが、特異的な症状に乏しく臨床症状からの診断は困難である。本症例では、菌種確定前から検査経過の段階でListeria属菌である可能性を主治医と共有することで、早期髄液検査の実施につながり、迅速かつ正確な診断確定に貢献した。本症例を通して細菌検査室がチーム医療の一員として検査業務に取り組む重要性を再認識した。
連絡先-0425233131(内線2375)
