講演情報

[GP4]外国籍の腸チフス患者よりNDM型メタロ-β-ラクタマーゼ産生大腸菌を検出した1例

*三浦 勇輔1、古畑 由紀江1、黒田 裕子1、小澤 和真1、岡村 邦彦1、奥山 力也1、後藤 文彦1、室屋 充明1 (1. NTT東日本関東病院)
【はじめに】Salmonella enterica subsp. enterica serovar Typhiは三類感染症である。感染源は汚染された食品や水の経口摂取で、全身性感染症を起こすことが知られている。NDM型メタロ-β-ラクタマーゼ(MBL)産生菌は南アジア諸国での報告例が多く、薬剤耐性の観点からも注目されている。今回我々は、外国籍患者の血液培養からS. Typhiが検出され、さらに尿および便培養からはNDM型MBL産生 Escherichia coli が検出された1例を経験したので報告する。【症例】インド国籍の20歳台女性。20XX年4月にインドへ一時帰国した際、腸炎様の症状を自覚していた。再来日16日後に発熱と吐き気で近医を受診し、感染性腸炎の診断でセファレキシンが処方された。処方薬を内服するも症状改善せず、3日後に当院の総合内科を紹介受診し、入院となった。【検査所見】CRP 12.25 mg/dL、白血球数 3,800 /μL。血液培養は14時間培養後2本中2本が陽転化し、グラム陰性桿菌が検出された。MALDI Biotyper(Bruker社)では、S. Typhi と同定され、生化学的性状においても証明された。サルモネラ免疫血清「生研」検査キット(デンカ生研株式会社)の血清型では、O9群陽性、Vi抗原陽性であり、H抗原の血清型では凝集反応はみられなかった。感受性検査は、ニューキノロン系は中等度耐性であったが、その他の薬剤は感性であった。また、入院2日目の尿および便培養からESBL産生かつカルバペネム系抗菌薬耐性の E. coli が検出され、NG-Test® CARBA5(SIMADZU)でNDM型MBLが陽性となった。なお、これらの検体からS. Typhiは検出されなかった。【経過】入院後はセフトリアキソン投与が開始され、接触予防策を講じながら個室管理となった。その後、症状が改善したことから10日目に退院となった。【まとめ】本症例はS. Typhi、ESBL産生かつNDM型MBL産生E. coli を同時に検出した稀有な症例を経験した。今後、さらなる外国籍患者や海外渡航歴を有する発熱患者に対して、薬剤耐性菌の検出も想定した感染管理および検査体制の構築が必要である。   連絡先:03-3448-6412