講演情報
[GP6]Listeria monocytogenesによる化膿性椎体炎の一例
*松井 梨紗1、加藤 浩勢1、伊藤 葵1、高岡 美也子1、藤代 佳子1、佐藤 純江1、後藤 亜江子1、菊池 賢1 (1. 東京女子医科大学病院 中央検査部)
【はじめに】Listeria monocytogenesは土壌や水中に存在する通性嫌気性グラム陽性短桿菌で、食品を介して感染し、妊婦や高齢者、免疫不全患者では髄膜炎など重篤な感染症を引き起こす。4℃以下でも増殖可能で、食品衛生管理が予防に重要である。血液寒天培地上ではStreptococcus agalactiaeと類似し、誤同定に注意を要する。今回、本菌による化膿性椎体炎を経験したので報告する。【症例】70歳代男性。17日前に腰痛と発熱を認め近医整形外科を受診、NSAIDsを処方されたが快方せず、後日当院を受診し精査加療目的で緊急入院となった。既往に慢性心不全を有していたため熱源精査で心エコーと胸腹部CTを実施したが、感染性心内膜炎や感染性動脈瘤、悪性腫瘍等の所見はなかった。入院時の血液培養は2セット4本陽性で、Listeriaを推定できるGram陽性桿菌が検出されTEICが開始された。翌日MALDI-TOF MSと16S rDNA sequenceで本菌と同定後ABPCが追加された。MRIでL3/4の椎間板および椎体に炎症を認め、化膿性椎体炎と診断された。治療中に腎機能が低下したためTEICをGMへ変更し、約2か月の抗菌薬治療で軽快退院した。【微生物学的検査】血液培養はTTP20時間で、ボトル外観に著明な溶血はなく、サブカルチャーした血液寒天培地を35℃、5% CO₂条件下で24時間培養したところβ溶血の白色コロニーを認めた。カタラーゼ試験、CAMP試験、運動性試験、低温発育能は全て陽性で、MALDI-TOF MSでL. monocytogenesと同定された。感受性試験でABPC、GMは感性を示した。【考察】本菌による化膿性椎体炎は、菌血症のうち5%未満と稀である。糖尿病患者で、侵入門戸は不明であるが腰痛と血液培養陽性で診断できた症例が多く、今回も同様であった。コロニー外観でS. agalactiaeと誤同定されるが、簡易検査で正確に同定したことは重要なpracticeと考える。Gram染色による迅速な菌種推定で早期に有効な抗菌薬の投与と診断へと繋がった症例となった。
連絡先 松井 梨紗 matsui.risa@twmu.ac.jp 03-3353-8112 (35034)
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