講演情報
[GP7]ニキビにおけるアクネ菌侵入能と生活習慣の関連
*古川 郁1、迫西 大輔2、伊藤 有希2、都築 弘汰2、栗原 由利子1 (1. 東京工科大学大学院 医療技術研究科 臨床検査学専攻 2.東京工科大学 医療保健学部 臨床検査学科)
【はじめに】
尋常性ざ瘡は、皮膚常在菌であるCutibacterium acnesの菌株ごとの病原性と、食事やアレルギーといった宿主側の生活習慣因子の両方が関与する多因子性疾患である。しかし、これらの因子がざ瘡にどのように関与しているかは未だ不明な点が多い。本研究では、C. acnesの生物学的特性である細胞侵入能と、複数の生活習慣因子が、ざ瘡の重症度に関連するかを多変量解析により明らかにすることを目的とした。
【方法】
ざ瘡のある学生に対し、顔面からスワブ法を用いて皮膚検体を採取した。ざ瘡の重症度はざ瘡数を基に4段階で分類した。アンケートで十数項目の宿主側因子に関する情報を収集した。また、各被験者由来のC. acnes株について、ヒト由来293T細胞を用いたInvasion Assayで細胞侵入能を定量化した。さらに、重症度を目的変数とする順序ロジスティック回帰分析を行い、Brant検定とVIF値でモデルの妥当性を検証した。統計的有意水準はp < 0.05とした。
【結果】
多変量解析の結果、乳製品の摂取頻度が重症度と独立して有意な正の関連を示した(オッズ比 1.42, 95%信頼区間 1.09-1.91, p = 0.0143)。一方、C. acnesの細胞侵入能は重症度と負の関連傾向を示したが、有意水準には達しなかった(オッズ比 0.993, 95%信頼区間 0.984-1.00, p = 0.0710)。また、他の宿主側因子とは有意な関連性はみられなかった。
【考察】
本研究の多変量モデルにおいて、乳製品の摂取がざ瘡重症度の増悪因子であることが示唆された。これは牛乳に含まれるIGF-1などが皮脂腺からの脂質分泌を亢進させるとする報告と一致する。一方、細菌の病原性として注目される細胞侵入能と臨床的重症度の関連は単純ではなく、今回の結果からも細胞侵入能が高い菌株でざ瘡の重症度が低いといった一見矛盾する傾向が得られた。これは侵入能の高い菌株が宿主の強い免疫応答を惹起し排除されやすい可能性や、バイオフィルム形成能など他の病原性因子がより強く関与する可能性が考えられる。
【結語】
尋常性ざ瘡において、乳製品の摂取が重症度に関連している可能性が示された。また、細菌の病原性評価には多面的な評価が必要であると考えられる。
尋常性ざ瘡は、皮膚常在菌であるCutibacterium acnesの菌株ごとの病原性と、食事やアレルギーといった宿主側の生活習慣因子の両方が関与する多因子性疾患である。しかし、これらの因子がざ瘡にどのように関与しているかは未だ不明な点が多い。本研究では、C. acnesの生物学的特性である細胞侵入能と、複数の生活習慣因子が、ざ瘡の重症度に関連するかを多変量解析により明らかにすることを目的とした。
【方法】
ざ瘡のある学生に対し、顔面からスワブ法を用いて皮膚検体を採取した。ざ瘡の重症度はざ瘡数を基に4段階で分類した。アンケートで十数項目の宿主側因子に関する情報を収集した。また、各被験者由来のC. acnes株について、ヒト由来293T細胞を用いたInvasion Assayで細胞侵入能を定量化した。さらに、重症度を目的変数とする順序ロジスティック回帰分析を行い、Brant検定とVIF値でモデルの妥当性を検証した。統計的有意水準はp < 0.05とした。
【結果】
多変量解析の結果、乳製品の摂取頻度が重症度と独立して有意な正の関連を示した(オッズ比 1.42, 95%信頼区間 1.09-1.91, p = 0.0143)。一方、C. acnesの細胞侵入能は重症度と負の関連傾向を示したが、有意水準には達しなかった(オッズ比 0.993, 95%信頼区間 0.984-1.00, p = 0.0710)。また、他の宿主側因子とは有意な関連性はみられなかった。
【考察】
本研究の多変量モデルにおいて、乳製品の摂取がざ瘡重症度の増悪因子であることが示唆された。これは牛乳に含まれるIGF-1などが皮脂腺からの脂質分泌を亢進させるとする報告と一致する。一方、細菌の病原性として注目される細胞侵入能と臨床的重症度の関連は単純ではなく、今回の結果からも細胞侵入能が高い菌株でざ瘡の重症度が低いといった一見矛盾する傾向が得られた。これは侵入能の高い菌株が宿主の強い免疫応答を惹起し排除されやすい可能性や、バイオフィルム形成能など他の病原性因子がより強く関与する可能性が考えられる。
【結語】
尋常性ざ瘡において、乳製品の摂取が重症度に関連している可能性が示された。また、細菌の病原性評価には多面的な評価が必要であると考えられる。
