講演情報
[GP15]呼吸機能検査を契機に大量胸水貯留の診断に至った1例
*竹好 彩香1、清水 康平1、鈴木 郁枝1、寳田 雄一1、桝谷 直司1、久武 真二1 (1. 東邦大学医療センター大森病院)
【はじめに】
胸水貯留の診断には画像検査が不可欠である。今回、呼吸機能検査を契機として迅速に画像検査へと誘導し得た症例を経験したので報告する。
【経過】
症例は、維持血液透析中の80歳代男性。労作時息切れと喀痰を主訴に当院総合内科を受診した。安静時には症状を認めず、胸痛やその他の随伴症状を認めなかった。喫煙歴は20本/日×55年のcurrent smokerである。
身体所見は、身長159.3㎝、体重71.5kg、血圧136/64mmHg、SpO2 98%(room air)、体温35.2℃。心音・呼吸音は正常で、著明な下腿浮腫を認めた。
呼吸器疾患の鑑別目的に、担当医より呼吸機能検査を依頼された。検査では、VC:1.63L(51.0%)、FEV1/FVC:72.43%と高度な拘束性換気障害を認めたが、フローボリューム曲線は下に凸を呈しており、閉塞性換気障害の存在も否定できない所見であった。また、FVC測定直後に一過性にSpO2が91%(room air)へ低下した。これらを踏まえ直ちに担当医へ連絡したころ、FRCおよびDLCOの追加測定が依頼された。その結果、TLCの低下、DLCO低下、DLCO/VAは正常であり、外性圧排による肺の拡張不良が疑われた。したがって、画像検査の追加が必要と判断した。当初、担当医の指示は呼吸機能検査終了後に後日再診予定であったが、検査終了後に外来へ戻るよう調整した。
胸部CT検査では、大量の胸水貯留を認めた。また心臓超音波検査では、左室壁運動は正常で、左室流入血流速波形ではE/A 1.88(偽正常化パターン)かつL波を認め、E/e' 16.9と左房圧上昇を示した。さらに、推定収縮期肺動脈圧49mmHg、IVC拡張、大量の両側胸水貯留を認めた。
【結語】
呼吸機能検査室では胸水貯留の直接診断はできないが、アドバイスサービスを通じた検査室から医師への情報提供により、大量の胸水貯留を診断し、その診断の遅れを未然に防ぐことが出来た貴重な症例を経験した。呼吸機能検査にはパニック値は存在しないものの、所見に応じて適切に判断し、検査室から直接医師へ連絡することの重要性を改めて認識した。
そのためには、正確な検査結果の解釈と疾患に関する知識が不可欠であることを再確認した。
東邦大学医療センター大森病院 臨床生理機能検査部 03-3762-4151(内線 3471)
胸水貯留の診断には画像検査が不可欠である。今回、呼吸機能検査を契機として迅速に画像検査へと誘導し得た症例を経験したので報告する。
【経過】
症例は、維持血液透析中の80歳代男性。労作時息切れと喀痰を主訴に当院総合内科を受診した。安静時には症状を認めず、胸痛やその他の随伴症状を認めなかった。喫煙歴は20本/日×55年のcurrent smokerである。
身体所見は、身長159.3㎝、体重71.5kg、血圧136/64mmHg、SpO2 98%(room air)、体温35.2℃。心音・呼吸音は正常で、著明な下腿浮腫を認めた。
呼吸器疾患の鑑別目的に、担当医より呼吸機能検査を依頼された。検査では、VC:1.63L(51.0%)、FEV1/FVC:72.43%と高度な拘束性換気障害を認めたが、フローボリューム曲線は下に凸を呈しており、閉塞性換気障害の存在も否定できない所見であった。また、FVC測定直後に一過性にSpO2が91%(room air)へ低下した。これらを踏まえ直ちに担当医へ連絡したころ、FRCおよびDLCOの追加測定が依頼された。その結果、TLCの低下、DLCO低下、DLCO/VAは正常であり、外性圧排による肺の拡張不良が疑われた。したがって、画像検査の追加が必要と判断した。当初、担当医の指示は呼吸機能検査終了後に後日再診予定であったが、検査終了後に外来へ戻るよう調整した。
胸部CT検査では、大量の胸水貯留を認めた。また心臓超音波検査では、左室壁運動は正常で、左室流入血流速波形ではE/A 1.88(偽正常化パターン)かつL波を認め、E/e' 16.9と左房圧上昇を示した。さらに、推定収縮期肺動脈圧49mmHg、IVC拡張、大量の両側胸水貯留を認めた。
【結語】
呼吸機能検査室では胸水貯留の直接診断はできないが、アドバイスサービスを通じた検査室から医師への情報提供により、大量の胸水貯留を診断し、その診断の遅れを未然に防ぐことが出来た貴重な症例を経験した。呼吸機能検査にはパニック値は存在しないものの、所見に応じて適切に判断し、検査室から直接医師へ連絡することの重要性を改めて認識した。
そのためには、正確な検査結果の解釈と疾患に関する知識が不可欠であることを再確認した。
東邦大学医療センター大森病院 臨床生理機能検査部 03-3762-4151(内線 3471)
