講演情報

[GP16]尿路感染を契機とした高アンモニア血症による意識障害の一例~改善前後の脳波検査~

*根岸 颯1、橋本 茂樹1、浅野 太貴1、志村 幸大1、佐藤 憲章1、益田 泰蔵1、石原 資1、髙尾 昌樹1 (1. 国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター病院)
【はじめに】高アンモニア血症は,血中アンモニア濃度が異常に上昇する病態であり,原因としては肝硬変などによる肝不全,門脈大循環シャント,先天性代謝異常症など多様な疾患により発症する.今回,ウレアーゼ産生菌による尿路感染症を契機に高アンモニア血症を呈し,意識障害を来した一例において改善前後の脳波を記録したので報告する.
【症例】80歳代,女性.多系統萎縮症を背景に栄養管理目的のため入院.入院4週目に意識状態の悪化(JCS 300)を認めた.
【生化学・尿検査】AST 54 U/L,ALT 54 U/L,CRP 4.70 mg/dL,BUN 41.4 mg/dL,Cre 0.81 mg/dL, NH3 140 µmol/ Lであった.尿定性検査においては亜硝酸塩(1+),白血球(2+),沈渣にて細菌(3+),白血球>100/HPFであった.
【細菌検査】尿培養よりウレアーゼ産生菌であるCorynebacterium urealyticumが検出された.
【脳波検査】非けいれん性てんかん重積による意識障害との鑑別のため脳波検査を実施した.意識障害時の脳波では,三相波が持続的に出現していたが,意識改善後の脳波では三相波は消失し,基礎波には後頭部優位に8〜9Hzのα帯域の波を認めるなど,改善がみられた.
【経過】血中アンモニア値が高値を示し,脳波にて三相波の出現を認めたことから,高アンモニア血症による意識障害と診断された.生化学検査および腹部CT等により肝疾患は否定され,尿培養にて C. urealyticum を検出したことから,ウレアーゼ産生菌による尿路感染症を契機とした高アンモニア血症であると考えられた.抗菌薬投与と尿道カテーテル挿入による尿閉の改善により,治療開始から1〜2日後に意識状態は改善(JCS 2)した.
【考察・結語】脳波検査は意識障害において非けいれん性てんかん重積との鑑別に重要であるが,今回,回復後の脳波も記録したことで脳機能障害の改善を客観的に証明することができ,治療効果判定に有用であった.重度の高アンモニア血症による脳障害は進行性かつ不可逆的となる可能性があり,早期の治療が必要である.脳波検査を含め多種のモダリティで評価を行い,早急に診断・治療を行うことが重要であると考えられ,意識障害における速やかな脳波検査を今後も提供していきたい.