講演情報

[GP20]D-ダイマー低値にて肺塞栓症をきたした1例

*栗山 聡奈1、高田 潤一郎1、梅澤 郷美1、髙橋 亜季子1、髙野 なつみ1、馬場 帆野佳1、千々岩 利紗1、近藤 昌知1 (1. 医療法人社団 恵仁会 府中恵仁会病院)
【背景】肺塞栓症は主に下肢の遊離した深部静脈血栓が、心臓を通り肺動脈を閉塞させる疾患で、致死率は10~30%程度の疾患である。今回D-ダイマー低値であるが重篤な肺塞栓症を発症した若年女性の症例を経験したので報告する。
【症例】28歳女性。1週間前から動悸症状を自覚し、2日前から症状が耐え難くなり近傍の呼吸器内科を受診した。新型コロナ等の感染症は陰性であったが、肺炎像を認めたため当院に紹介となった。既往歴は肺炎(2ヶ月前)、服薬はピル、喫煙歴あり、視診上下肢腫脹なし、
来院時バイタル 体温36.5℃、呼吸94回/min、血圧上下110/36mmHg、SpO2 95%、
ラボデータ AST 27IU/l、ALT 38IU/l、γ-GTP 127IU/l、CK 82IU/l、CK-MB 8IU/l、CRP 1.80mg/dl、WBC 8800/μl、RBC 4840000/μl、PLT 43000/μl、PT-SEC 11.9秒、APTT 30.5秒、D-ダイマー 1.4μg/ml であった。
動悸症状強く心電図検査と心臓超音波検査が依頼された。心電図検査にてⅡ・Ⅲ・aVF・V1-V6まで陰性T波がみられ、心臓超音波検査にて左室の圧排像(D-shape)、右室の拡大、McConnell徴候などの所見を認めたため、肺動脈と下肢静脈の造影CT検査が追加された。結果は下大静脈から総腸骨静脈に血栓を認め、さらに両肺動脈起始部付近にも血栓を認めたため肺塞栓症と診断され入院となった。
高度治療室にて抗凝固治療を行い、発症後7日で両側肺動脈の血栓の消失を認めた。心臓超音波検査でも右心負荷所見は消失しており、発症後8日で退院となった。
【考察】近年D-ダイマー値のカットオフ値は議論されているが、若年者のカットオフ値は高齢者に比べ高値となるのが一般的である。しかしD-ダイマー値が低値であっても、症状や服薬歴等から肺塞栓症を考慮に入れた検査が必要であると思われる。