講演情報
[P04-02]中部日本下におけるフィリピン海プレートの沈み込みがもたらす温度変化
*木村 朝水1、末永 伸明2、吉岡 祥一2,1、松本 拓己3 (1. 神戸大学大学院理学研究科惑星学専攻、2. 神戸大学都市安全研究センター、3. 防災科学技術研究所)
1.はじめに
関東下では,太平洋(PAC)プレートとフィリピン海(PHS)プレートが接触しており,複雑な温度場が形成されていると考えられている.これまで,PACプレートとPHSプレートの二重沈み込みを再現した二次元および三次元温度構造モデルの構築が行われてきた.それらはPHSスラブを動的に沈み込ませるモデル(例えば,Yoshioka et al., 2015, GJI; Ji et al., 2017, Sci. Rep.)と,モデル領域に固定した物質として扱うモデル(例えば,Iwamori, 2000, EPSL; Wada and He, 2017, GRL)に二分されるが,このような設定の違いが,得られる温度構造に与える影響は明らかにされていない.そこで,本研究では,関東地方を対象にPACプレートとPHSプレートの二重沈み込みを導入した二次元熱対流モデリングを実施することにより,PHSプレートの動的な沈み込みが周囲の温度場・流れ場に与える影響を評価した.
2.モデル設定
本研究では,Yoshioka et al. (2015)による二次元箱形熱対流モデルを使用した.モデル設定を図1に示す.モデル領域は水平方向584 km,深さ方向280 kmとし,温度は2 km,流線は8 kmの格子間隔で数値計算を行った.本モデルでは,モデル領域内に配置したガイドに沿ってプレートを沈み込ませた.PACプレートについてはNakajima et al.(2009, JGR)をもとにガイドを設定し,8.17 cm/年の沈み込み速度を,PHSプレートについては弘瀬・他(2008, 地震)およびNakajima et al.(2009)をもとにガイドを設定し,3.74 cm/年の沈み込み速度を与えた.計算時間は50 Myrとし,41 MyrにPHSプレートの沈み込みを開始させた.PACプレート右端の温度境界条件にはプレート冷却モデル(McKenzie, 1969, GJI)を適用した.モデルの右側境界におけるPACプレートの海底年代は約136 Myrである(Seton et al., 2020, GGG).そのためPACプレートの右側境界における年齢は,計算終了時(50 Myr)に136 Myrになるよう,計算時間内で86 Myrから136 Myrまで変化させた.PACプレートの厚さはYoshii (1975, EPSL)の式を適用し,プレート年齢の関数とした.PHSプレートの右側温度境界にもプレート冷却モデルを適用した.PHSスラブの下面がPACスラブの上面と接触するように,PHSスラブの厚さを50 kmとした.初期温度分布にはYoshioka and Sanshadokoro (2002, GJI)による半無限冷却モデルを適用した.Rigid mantle wedgeを導入することにより,PACスラブとマントルウェッジの間のデカップリングを表現した.また第四紀地殻変動に伴う削剥・堆積に伴う温度上昇・下降,およびPACプレート上面におけるプレート間摩擦による温度上昇の効果を導入した.
3.結果・考察
(1)PHSプレートを動的に沈み込ませたモデル(kinematic model)
PHSプレートの沈み込み開始直後,PHSスラブ先端のマントルウェッジに局所的な時計周りの流れが生じ,それがPACスラブを加熱する様子がみられた.PHSプレートを沈み込ませないモデルと比較して,PACスラブ上面は最大400℃程度加熱され,計算終了時においてもその高温領域はPACスラブ上面に広く分布するといった結果が得られた.
(2)PHSプレートをモデル領域内で固定したモデル(non-moving model)との比較
non-moving modelでは,初期状態から計算終了時までPHSスラブを固定し,PHSスラブ内部は熱伝導領域として流れが生じない設定にした.kinematic modelと比較して,non-moving modelではPACスラブ内部が低温となり, Iwamori (2000)と調和的な結果となった.PACスラブ内部における両モデルの温度差は最大700℃程度となった.またkinematic modelではnon-moving modelでは見られないPHSスラブの上側に位置しているマントルウェッジ内に上昇流,およびそれに伴う温度上昇が生じた.
以上のように,PHSスラブを動的に沈み込ませるモデルと固定物質として扱うモデルの間で,得られる温度場・流れ場に大きな違いが生じた.本講演では,このような違いが生じる要因についても発表する予定である.また,Toda et al. (2008, Nature Geosci.)で提案されたPACスラブの上面に位置している関東フラグメントを導入したモデルを構築し,それが温度場・流れ場に与える影響も評価する予定である.
関東下では,太平洋(PAC)プレートとフィリピン海(PHS)プレートが接触しており,複雑な温度場が形成されていると考えられている.これまで,PACプレートとPHSプレートの二重沈み込みを再現した二次元および三次元温度構造モデルの構築が行われてきた.それらはPHSスラブを動的に沈み込ませるモデル(例えば,Yoshioka et al., 2015, GJI; Ji et al., 2017, Sci. Rep.)と,モデル領域に固定した物質として扱うモデル(例えば,Iwamori, 2000, EPSL; Wada and He, 2017, GRL)に二分されるが,このような設定の違いが,得られる温度構造に与える影響は明らかにされていない.そこで,本研究では,関東地方を対象にPACプレートとPHSプレートの二重沈み込みを導入した二次元熱対流モデリングを実施することにより,PHSプレートの動的な沈み込みが周囲の温度場・流れ場に与える影響を評価した.
2.モデル設定
本研究では,Yoshioka et al. (2015)による二次元箱形熱対流モデルを使用した.モデル設定を図1に示す.モデル領域は水平方向584 km,深さ方向280 kmとし,温度は2 km,流線は8 kmの格子間隔で数値計算を行った.本モデルでは,モデル領域内に配置したガイドに沿ってプレートを沈み込ませた.PACプレートについてはNakajima et al.(2009, JGR)をもとにガイドを設定し,8.17 cm/年の沈み込み速度を,PHSプレートについては弘瀬・他(2008, 地震)およびNakajima et al.(2009)をもとにガイドを設定し,3.74 cm/年の沈み込み速度を与えた.計算時間は50 Myrとし,41 MyrにPHSプレートの沈み込みを開始させた.PACプレート右端の温度境界条件にはプレート冷却モデル(McKenzie, 1969, GJI)を適用した.モデルの右側境界におけるPACプレートの海底年代は約136 Myrである(Seton et al., 2020, GGG).そのためPACプレートの右側境界における年齢は,計算終了時(50 Myr)に136 Myrになるよう,計算時間内で86 Myrから136 Myrまで変化させた.PACプレートの厚さはYoshii (1975, EPSL)の式を適用し,プレート年齢の関数とした.PHSプレートの右側温度境界にもプレート冷却モデルを適用した.PHSスラブの下面がPACスラブの上面と接触するように,PHSスラブの厚さを50 kmとした.初期温度分布にはYoshioka and Sanshadokoro (2002, GJI)による半無限冷却モデルを適用した.Rigid mantle wedgeを導入することにより,PACスラブとマントルウェッジの間のデカップリングを表現した.また第四紀地殻変動に伴う削剥・堆積に伴う温度上昇・下降,およびPACプレート上面におけるプレート間摩擦による温度上昇の効果を導入した.
3.結果・考察
(1)PHSプレートを動的に沈み込ませたモデル(kinematic model)
PHSプレートの沈み込み開始直後,PHSスラブ先端のマントルウェッジに局所的な時計周りの流れが生じ,それがPACスラブを加熱する様子がみられた.PHSプレートを沈み込ませないモデルと比較して,PACスラブ上面は最大400℃程度加熱され,計算終了時においてもその高温領域はPACスラブ上面に広く分布するといった結果が得られた.
(2)PHSプレートをモデル領域内で固定したモデル(non-moving model)との比較
non-moving modelでは,初期状態から計算終了時までPHSスラブを固定し,PHSスラブ内部は熱伝導領域として流れが生じない設定にした.kinematic modelと比較して,non-moving modelではPACスラブ内部が低温となり, Iwamori (2000)と調和的な結果となった.PACスラブ内部における両モデルの温度差は最大700℃程度となった.またkinematic modelではnon-moving modelでは見られないPHSスラブの上側に位置しているマントルウェッジ内に上昇流,およびそれに伴う温度上昇が生じた.
以上のように,PHSスラブを動的に沈み込ませるモデルと固定物質として扱うモデルの間で,得られる温度場・流れ場に大きな違いが生じた.本講演では,このような違いが生じる要因についても発表する予定である.また,Toda et al. (2008, Nature Geosci.)で提案されたPACスラブの上面に位置している関東フラグメントを導入したモデルを構築し,それが温度場・流れ場に与える影響も評価する予定である.

