講演情報

[P10-01]衛星画像データを用いたミャンマー地震に伴う地表断層周辺の三成分変位解析

*川崎 慎治1、大沼 巧1、影島 充万1、高橋 恭平1、山口 悠哉1、原 彰男1 (1. (株)地球科学総合研究所)
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2025年3月28日にミャンマー中部で発生したミャンマー地震(Mw7.7)は、インドプレートとスンダプレートの境界付近に位置するザガイン断層が震源断層であると考えられている。USGSなどによれば、南北約350 kmにわたる大規模な断層破壊(横ずれ断層型)が報告されている。また、国土地理院のピクセルマッチング解析によると、ネピドー北部で最大約6 mの横ずれ変位が生じたとされる。本研究では、衛星画像データを用い、ピクセルオフセット法とInSAR解析を組み合わせた三成分変位解析を試みた。通常、断層近傍では大きな地盤変動によるサイクルスキップのためInSAR(差分干渉SAR)解析が困難となる。しかし、まずピクセルオフセット法で1 mを超える水平方向の変位を推定・補正し、その結果をInSAR解析に適用することで、震源断層の極近傍でも差分干渉処理を可能とした。
解析には、SAR衛星であるSentinel-1および光学衛星であるSentinel-2によって地震前後に観測された衛星データを使用した。Sentinel-2データの空間分解能は10m/画素であり、Sentinel-1データの約14m/画素(衛星飛翔方向)より高いため、特にザガイン断層に沿う南北方向の変位の解析に前者を用いた。図1はSentinel-2データを用いたピクセルオフセット法により得た南北方向のずれ量分布である。右横ずれ走向移動断層の活動に伴う、断層西側では北向きの、東側では南向きの、最大約4mに達する変位量の分布が明らかとなった。図2は南行軌道の干渉ペアのInSAR結果であり、衛星視線(LOS)方向の変位量分布(水平成分補正後では簡易的に上下成分と見なせる)を示す。前処理としてピクセルオフセット法により地震前後のデータ間の画素ずれ量を調査し、干渉処理が可能となるように精密幾何補正を施している。変位は、画像中央を南北に縦断するザガイン断層の東側では主に衛星に近づくセンス、西側では衛星から遠ざかるセンスであり、変位量はそれぞれ最大50cm程度に達する。南北方向およびLOS方向の変位量分布は、ザガイン断層に沿った極めて明瞭なコントラストを示す。LOS変位量では、変位量の大小のパターンが断層に沿って交互に配列している。また、マンダレーの北方約50km付近では、走向移動成分が急激に消失するとともにLOS方向では断層の東西両側で衛星から遠ざかるセンスの変位が認められる。これらの変位パターンは、既存文献によるザガイン断層の幾何学的な形状や断層のセグメンテーションとの関連が示唆される。
現時点での解析は速報段階であり、2.5次元や3次元の変位解析には至っていない。今後、南行軌道および北行軌道の干渉ペアそれぞれで得たLOS方向変位量を統合解析することにより、上下方向および東西方向の変位を高精度に推定する予定である。今回得られた簡易的な上下成分の結果からは、ザガイン断層沿い400 km以上にわたって非一様な変位が抽出されている。 今後、これらの結果を活断層分布、地形・地質構造、地震活動履歴、強震動生成域と対比することで、プレート境界周辺における長大横ずれ断層系の変形過程と地震活動履歴(断層セグメント、強震動特性)の関係解明に寄与することが期待される。特に、断層末端部(北端)における特徴的な変位パターンの成因については、周辺のテクトニクス、地形地質や断層ジオメトリー(ステップオーバー、スプレイ構造など)との関連を踏まえ、検討を進める予定である。