講演情報
[P19-01]北海道オホーツク海沿岸における流氷による地震波ノイズ振幅の抑制
*大野 藍子1、前田 拓人1、平野 史朗1 (1. 弘前大学大学院理工学研究科)
固体地球は断層運動だけでなく、海洋運動や雨といった自然現象や、交通などの人間活動によって絶えず揺れている。この揺れを地震波ノイズと言い、地震計に常に記録されている。大野・他(2024)では、約13年間にわたる地震波ノイズ振幅値を解析し、1 Hz以下の地震波ノイズの季節変動が周辺の海洋運動に起因していることを示した。また、自然現象によって地震波ノイズが抑制される例も報告されている。Tsai and McNamara (2011)では、ベーリング海における地震波ノイズを解析し、海氷に覆われる季節(12〜5月)には、特に1秒周期付近でノイズ振幅が顕著に低下することを示した。冬季には日本においてもオホーツク海沿岸に流氷が観測されるが、国内において流氷が地震波ノイズに与える影響については、小原 (2001) に言及はあるものの、十分には検討されてこなかったようである。そこで本研究では、日本全国で観測された地震波ノイズ振幅値を解析し、流氷との関連を調べることを目的とした。
本研究では、2004年から2024年までの高度地震観測網Hi-netによる連続地震波形記を使用した。大野・他(2024)と同様に、Hi-net観測点で得られた3成分連続速度波形記録の機器応答を補正後にオクターブ幅のバンドパスフィルターを適用し,1分ごとのRMS値を計算した。以下ではこれを地震波振幅値と呼ぶ。解析には0.1から32 Hzまでの帯域を使用した。
周波数帯ごと冬季の日毎の振幅値を比較したところ、流氷が観測点近傍の沿岸部に到達していると思われる期間において、1~2 Hzの帯域で特に振幅の減少が顕著であった。また、0.1~1.0 Hzでも振幅の減少は見られたが、減少率は1~2 Hzに比べてやや小さかった。一方、2 Hz以上の高周波帯では明確な減少は確認されなかった。次に、地震波振幅値の変動と流氷の時空間変化との関係を調べるため、1~2 Hzの地震波振幅値をNational Snow and Ice Data Center(NSIDC)が提供する海氷濃度データと比較した。このデータは、観測された衛星受動マイクロ波データを用いて、25 km四方のグリッドごと海氷の存在割合(0〜1000‰)を日単位で示したものであり、海氷の広がりを定量的に把握することができる。オホーツク海沿岸の地震計観測点における地震波振幅値の時系列と観測点近傍の海面おける海氷濃度の時系列を比較した結果、海氷濃度が上昇した際にノイズ振幅が減少しており、両者の間には明瞭な反相関が認められた。特に沿岸に近い海域のグリッドでは、海氷濃度が一定の閾値を超えて上昇すると、それと同時に地震波ノイズの減少が観測された。一方、観測点から北東方向に離れた沖合では、海氷濃度の上昇が遅れて現れる傾向があった。この特徴は流氷による地震波振幅値の低減に関係なく、単に海流によって沿岸に運ばれた流氷が次第に堆積し、沖合にまで溜まっていく過程によって形成された流氷の空間分布を反映したに過ぎないと考えられる。
これらの結果から、流氷がオホーツク海の波浪や海洋運動を抑制し、その結果として地震波ノイズの発生を抑えている可能性が高いと考えられる。今後は、地震波振幅と流氷の有無の因果関係について、それぞれの時空間分布を用いたより定量的な解析を進めることで、冬季における地震波ノイズの減衰に対する流氷の寄与を詳細に評価していく予定である。
本研究では、2004年から2024年までの高度地震観測網Hi-netによる連続地震波形記を使用した。大野・他(2024)と同様に、Hi-net観測点で得られた3成分連続速度波形記録の機器応答を補正後にオクターブ幅のバンドパスフィルターを適用し,1分ごとのRMS値を計算した。以下ではこれを地震波振幅値と呼ぶ。解析には0.1から32 Hzまでの帯域を使用した。
周波数帯ごと冬季の日毎の振幅値を比較したところ、流氷が観測点近傍の沿岸部に到達していると思われる期間において、1~2 Hzの帯域で特に振幅の減少が顕著であった。また、0.1~1.0 Hzでも振幅の減少は見られたが、減少率は1~2 Hzに比べてやや小さかった。一方、2 Hz以上の高周波帯では明確な減少は確認されなかった。次に、地震波振幅値の変動と流氷の時空間変化との関係を調べるため、1~2 Hzの地震波振幅値をNational Snow and Ice Data Center(NSIDC)が提供する海氷濃度データと比較した。このデータは、観測された衛星受動マイクロ波データを用いて、25 km四方のグリッドごと海氷の存在割合(0〜1000‰)を日単位で示したものであり、海氷の広がりを定量的に把握することができる。オホーツク海沿岸の地震計観測点における地震波振幅値の時系列と観測点近傍の海面おける海氷濃度の時系列を比較した結果、海氷濃度が上昇した際にノイズ振幅が減少しており、両者の間には明瞭な反相関が認められた。特に沿岸に近い海域のグリッドでは、海氷濃度が一定の閾値を超えて上昇すると、それと同時に地震波ノイズの減少が観測された。一方、観測点から北東方向に離れた沖合では、海氷濃度の上昇が遅れて現れる傾向があった。この特徴は流氷による地震波振幅値の低減に関係なく、単に海流によって沿岸に運ばれた流氷が次第に堆積し、沖合にまで溜まっていく過程によって形成された流氷の空間分布を反映したに過ぎないと考えられる。
これらの結果から、流氷がオホーツク海の波浪や海洋運動を抑制し、その結果として地震波ノイズの発生を抑えている可能性が高いと考えられる。今後は、地震波振幅と流氷の有無の因果関係について、それぞれの時空間分布を用いたより定量的な解析を進めることで、冬季における地震波ノイズの減衰に対する流氷の寄与を詳細に評価していく予定である。

