講演情報
[S05-01]エルサルバドル沈み込み帯における熱構造・スラブ脱水と地震・火山活動の関連性
*末永 伸明1、吉岡 祥一1,2、Vlad Manea3、Marina Manea3、Erika Moreno4、季 穎鋒5 (1. 神戸大学 都市安全研究センター、2. 神戸大学 大学院理学研究科 惑星学専攻、3. メキシコ国立自治大学 地球科学研究所 計算地球ダイナミクス研究室、4. 東京大学 地震研究所 日本列島モニタリング研究センター、5. 中国科学院 チベット高原研究所)
本研究では、中米の中でもテクトニクスが活発でありながら、未解明な部分の多いエルサルバドル地域において、3次元熱対流スラブ沈み込みモデリングを通じて、沈み込みに伴う温度構造とスラブからの脱水過程に関する新たな知見を提示する。
エルサルバドルはココスプレートの沈み込み帯に位置し、北北東方向に7.6〜8.4 cm/年でカリブプレートの下に沈み込んでいる。同地域では、2001年と2014年にそれぞれMw7.7及びMw7.3の正断層型地震がスラブ内で発生しており、2012年にはMw7.3のプレート境界地震が発生している。また、エルサルバドルの火山は、1,000 km以上にわたって連なる中央アメリカ火山前線(CAVF)の一部に属する。その形成時期については、更新世以降に東部のミゲル・ベルリン火山の形成など火山活動が活発化し、中央部では完新世形成のサンサルバドル火山などが現在も活動を続けている。
この地域には高密度な観測網が存在しないが、近年得られた空間補間された高解像度の地殻熱流量データ(Lucazeau, 2019)は、沈み込みプロセスを熱的に制約する上で有用である。本研究では、未知パラメーターおよび熱力学的条件を組み合わせた数値シミュレーションを行い、観測値とモデル計算値の地殻熱流量の残差の二乗平均平方根(RMS)が最小になるモデルから最適な温度構造を推定した。本研究では、海溝の前進速度とプレート境界面の有効摩擦係数を未知パラメーターとした。有効摩擦係数は大陸地殻の厚さに相当する深さ32 kmまでの摩擦熱を支配し、浅部のプレート境界面の温度上昇に寄与する。一方、海溝の前進速度はプレート境界深部(大陸モホ面以深)の温度上昇に影響する。両者は寄与する深度が異なるため、ほぼ独立に評価することが可能である。さらに、初期温度分布については大陸地殻の地震の最大深度が海溝軸側から内陸部へ向かって浅くなっていることを考慮し、海溝軸に直交方向に不均一な深さ方向の温度勾配を設定した場合と、海溝軸の直交方向に沿って一様な温度勾配を与えた場合の計算を行い、両者のRMS値の比較を行った。また、大陸モホ面以深のプレート境界面に低粘性層を導入するモデルについても検討した。
その結果、得られたRMS最小の最適モデルでは、2012年Mw 7.3のプレート境界型地震発生時のすべり領域ではプレート境界面温度が145〜355℃と見積もられ、先行研究(Hyndman et al., 1995)において不安定すべり領域に相当するとされている温度範囲と調和的であった。さらに、余効すべり域の浅部側のプレート境界面の温度は440~460℃と推定され、この温度範囲は不安定から安定すべりへの遷移領域に相当する。一方、2001年Mw 7.7および2014年Mw7.3のスラブ内地震の震源域での温度は、それぞれ約630°Cおよび約660°Cと見積もられた。Mw3.0以上のスラブ内地震は概ね300〜450°Cの温度範囲で集中して発生しており、温度によって破壊領域が制御されていることが示唆された。
脱水過程の解析では、二種類の異なる顕著なスラブからの脱水が推定された。ひとつは、沈み込む海洋地殻からの深さ40〜60 kmでの顕著な脱水で、これは2012年地震の余効すべり領域に相当する。したがって、余効すべりの発生には、プレート境界面の不安定すべりから安定すべりへの温度による熱的制約と、スラブからの脱水よる摩擦低下の両方が寄与している可能性が考えられる。もうひとつは、火山フロント直下のスラブからの脱水である。注目すべきことに、火山下での脱水勾配の総量の時間変化は、海溝軸方向に沿って変動するものの、現在に向けて増加傾向を示し、そのピークは更新世以降に形成された若いエルサルバドル火山弧の形成時期とおおよそ一致した。
これらの結果は、温度構造と脱水の空間分布や時間変化が、プレート境界型大地震およびスラブ内地震の発生、さらに火山活動を支配していることを強く示唆しており、データが限られた地域でも熱対流モデリングが有力なアプローチになりうることを示している。
エルサルバドルはココスプレートの沈み込み帯に位置し、北北東方向に7.6〜8.4 cm/年でカリブプレートの下に沈み込んでいる。同地域では、2001年と2014年にそれぞれMw7.7及びMw7.3の正断層型地震がスラブ内で発生しており、2012年にはMw7.3のプレート境界地震が発生している。また、エルサルバドルの火山は、1,000 km以上にわたって連なる中央アメリカ火山前線(CAVF)の一部に属する。その形成時期については、更新世以降に東部のミゲル・ベルリン火山の形成など火山活動が活発化し、中央部では完新世形成のサンサルバドル火山などが現在も活動を続けている。
この地域には高密度な観測網が存在しないが、近年得られた空間補間された高解像度の地殻熱流量データ(Lucazeau, 2019)は、沈み込みプロセスを熱的に制約する上で有用である。本研究では、未知パラメーターおよび熱力学的条件を組み合わせた数値シミュレーションを行い、観測値とモデル計算値の地殻熱流量の残差の二乗平均平方根(RMS)が最小になるモデルから最適な温度構造を推定した。本研究では、海溝の前進速度とプレート境界面の有効摩擦係数を未知パラメーターとした。有効摩擦係数は大陸地殻の厚さに相当する深さ32 kmまでの摩擦熱を支配し、浅部のプレート境界面の温度上昇に寄与する。一方、海溝の前進速度はプレート境界深部(大陸モホ面以深)の温度上昇に影響する。両者は寄与する深度が異なるため、ほぼ独立に評価することが可能である。さらに、初期温度分布については大陸地殻の地震の最大深度が海溝軸側から内陸部へ向かって浅くなっていることを考慮し、海溝軸に直交方向に不均一な深さ方向の温度勾配を設定した場合と、海溝軸の直交方向に沿って一様な温度勾配を与えた場合の計算を行い、両者のRMS値の比較を行った。また、大陸モホ面以深のプレート境界面に低粘性層を導入するモデルについても検討した。
その結果、得られたRMS最小の最適モデルでは、2012年Mw 7.3のプレート境界型地震発生時のすべり領域ではプレート境界面温度が145〜355℃と見積もられ、先行研究(Hyndman et al., 1995)において不安定すべり領域に相当するとされている温度範囲と調和的であった。さらに、余効すべり域の浅部側のプレート境界面の温度は440~460℃と推定され、この温度範囲は不安定から安定すべりへの遷移領域に相当する。一方、2001年Mw 7.7および2014年Mw7.3のスラブ内地震の震源域での温度は、それぞれ約630°Cおよび約660°Cと見積もられた。Mw3.0以上のスラブ内地震は概ね300〜450°Cの温度範囲で集中して発生しており、温度によって破壊領域が制御されていることが示唆された。
脱水過程の解析では、二種類の異なる顕著なスラブからの脱水が推定された。ひとつは、沈み込む海洋地殻からの深さ40〜60 kmでの顕著な脱水で、これは2012年地震の余効すべり領域に相当する。したがって、余効すべりの発生には、プレート境界面の不安定すべりから安定すべりへの温度による熱的制約と、スラブからの脱水よる摩擦低下の両方が寄与している可能性が考えられる。もうひとつは、火山フロント直下のスラブからの脱水である。注目すべきことに、火山下での脱水勾配の総量の時間変化は、海溝軸方向に沿って変動するものの、現在に向けて増加傾向を示し、そのピークは更新世以降に形成された若いエルサルバドル火山弧の形成時期とおおよそ一致した。
これらの結果は、温度構造と脱水の空間分布や時間変化が、プレート境界型大地震およびスラブ内地震の発生、さらに火山活動を支配していることを強く示唆しており、データが限られた地域でも熱対流モデリングが有力なアプローチになりうることを示している。
