講演情報
[S06-02]宮城県大崎平野下に見る日本海拡大東端部の地殻改変構造
-2019年中部東北日本弧横断地震探査の総合的解釈-
*岩崎 貴哉1、佐藤 比呂志2、蔵下 英司3、石毛 宏和4、清水 英彦5、石山 達也3、飯高 隆3、篠原 雅尚3、川崎 慎治4、阿部 進4、平田 直3 (1. 地震予知総合研究振興会、2. 静岡大学防災総合センター、3. 東京大学地震研究所、4. (株)地球科学総合研究所、5. (株)石油資源開発 技術本部)
2019年に日本海大和堆から東北日本弧中部を経て日本海溝に至る海陸統合探査が実施された(佐藤他,2020a,b).この探査の陸域測線(全長155 km)は,庄内平野から奥羽脊梁山地,北上河谷帯を経て北上山地に至る.地質学的に,測線西部は日本海拡大時に噴出した玄武岩,中部は日本海拡大後の島弧火成活動によるカルデラ群で特徴づけられ,測線最東部は南部北上帯に属する.本発表では,この陸域測線で過去5年間に得られた地殻・上部マントル構造に対して地質・地球物理学的情報を加えた総合的解釈に基づき,特に測線東部周辺域における日本海拡大に伴うリフティング構造について考察する.
我々の速度構造モデルによれば,地殻最浅部は著しい変形を受けた数層の堆積岩・火山砕屑岩(Vp=2.0-5.5km/s)で構成される(Fig. 1(a)).その形状は,背弧拡大期に生成された断層群やその後の島弧火成活動に伴うカルデラ群とよい対応を示す.基盤上部は二層で構成され,全体の厚さは3~5 kmである.上層の速度は5.65~5.8から5.8~5.9 km/sで,測線西部から中部に向かって徐々に低下する.一方,下層の速度は6.0~6.2km/sである.
本発表の主題である測線東部の構造における最も重要な知見は,南部北上帯の高速度の基盤上部(Vp=5.8~5.9-6.3 km/s)がその西側の北上河谷帯下に数kmの厚みを持って入り込み,緩やかな西傾斜構造境界(傾斜角<15o)を形成していることである.更に,反射断面では,北上河谷帯西部下までは中部地殻(深さ15-25 km)が反射的であるのに対し,それより東側では透明である.この高速度ブロック内では地震活動が活発で,2003年宮城県北部地震(Mj=6.4)もこの領域内で発生した(Fig. 1(a)).また,構造境界周辺では深さ15kmまでかなり顕著な地震活動が認められる.一方,その西側の北上河谷帯側上部地殻は比較的低速度(Vp=5.8-6.1 km/s)で,地震活動は極めて低調である.従って,南部北上帯の高速度ブロックは,その西縁境界部も含めて,単に構造の面だけでなくその力学的挙動も北上河谷帯下の上部地殻と大きく異なっている可能性が高い.
北上河谷帯を含む北上低地帯は日本海拡大期の正断層運動と密接な構造を持ち,これらの正断層は鮮新世以降に反転して逆断層運動を行ってきた(Kato, et al., 2006; Sato et al., 2004). 我々のモデルによれば,北上河谷帯下の最浅部にVp=2.0-5.0 km/sの層が2~5 kmの厚さで存在し,その底部(Vp=4.5~5 km/s)は火山砕屑岩と解釈される.この火山砕屑岩と基盤の境界は,3つのステップを伴って西方に深くなる(Fig. 1(a),(b)).これらのステップは,東側から須江断層,旭山撓曲,及び大崎平野下に伏在する断層(大崎断層(新称))に相当し,これらの断層群はドミノブロック構造を形成していると考えられる.しかし,上述の西傾斜境界の傾きは緩やかで,日本海拡大時に形成された断層群そのものに対応づけることは難しいと思われる.我々は,この西傾斜境界を含む浅部構造は,測線周辺域の複雑な断層帯の複合構造であると考える.測線の北側には東南東-西北西方向の走向を持つ加護坊山断層が存在する.この断層の深部延長部が上述のドミノ構造と交錯している可能性が高い.上述の数kmの厚さの低角西傾斜構造は,ドミノ構造底部及びドミノ構造を切る加護坊山断層によって複合的に形成されたと解釈される(Fig.1(b)).また,Matsubara et al. (2022)のtomography解析によれば,測線東部下部地殻(深さ20-30 km)のVpが6.8~7.2 km/s,Vp/Vsが1.75~1.85と求められており,やはりこの領域における日本海拡大期の影響(玄武岩質岩体貫入)を強く示唆する.
本測線における構造は,極めて複雑な地殻最前部構造とともに,その西部は反射体の乏しく深い地震活動(<~20 km),中部は反射的中部・下部地殻を示すとともに浅い地震活動(<~10km)と低周波地震が特徴で,それぞれ日本海拡大期の中絶リフト,島弧火成活動に支配されていると考える.測線東部は,上述の顕著な西傾斜構造境界と深さ15km以浅の地震活動が特徴づけられる.大崎平野の形成には日本海拡大期の正断層運動が大きな役割を果たしたと推定されてきた.我々のモデルは大崎平野下に西傾斜正断層の存在を強く示唆し,この推定を裏付けるものである.北上低地帯の日本海拡大時の正断層は、その後の反転運動によって震源断層として挙動している例が多く,我々の結果は震源断層マッピングの観点からも重要である.
我々の速度構造モデルによれば,地殻最浅部は著しい変形を受けた数層の堆積岩・火山砕屑岩(Vp=2.0-5.5km/s)で構成される(Fig. 1(a)).その形状は,背弧拡大期に生成された断層群やその後の島弧火成活動に伴うカルデラ群とよい対応を示す.基盤上部は二層で構成され,全体の厚さは3~5 kmである.上層の速度は5.65~5.8から5.8~5.9 km/sで,測線西部から中部に向かって徐々に低下する.一方,下層の速度は6.0~6.2km/sである.
本発表の主題である測線東部の構造における最も重要な知見は,南部北上帯の高速度の基盤上部(Vp=5.8~5.9-6.3 km/s)がその西側の北上河谷帯下に数kmの厚みを持って入り込み,緩やかな西傾斜構造境界(傾斜角<15o)を形成していることである.更に,反射断面では,北上河谷帯西部下までは中部地殻(深さ15-25 km)が反射的であるのに対し,それより東側では透明である.この高速度ブロック内では地震活動が活発で,2003年宮城県北部地震(Mj=6.4)もこの領域内で発生した(Fig. 1(a)).また,構造境界周辺では深さ15kmまでかなり顕著な地震活動が認められる.一方,その西側の北上河谷帯側上部地殻は比較的低速度(Vp=5.8-6.1 km/s)で,地震活動は極めて低調である.従って,南部北上帯の高速度ブロックは,その西縁境界部も含めて,単に構造の面だけでなくその力学的挙動も北上河谷帯下の上部地殻と大きく異なっている可能性が高い.
北上河谷帯を含む北上低地帯は日本海拡大期の正断層運動と密接な構造を持ち,これらの正断層は鮮新世以降に反転して逆断層運動を行ってきた(Kato, et al., 2006; Sato et al., 2004). 我々のモデルによれば,北上河谷帯下の最浅部にVp=2.0-5.0 km/sの層が2~5 kmの厚さで存在し,その底部(Vp=4.5~5 km/s)は火山砕屑岩と解釈される.この火山砕屑岩と基盤の境界は,3つのステップを伴って西方に深くなる(Fig. 1(a),(b)).これらのステップは,東側から須江断層,旭山撓曲,及び大崎平野下に伏在する断層(大崎断層(新称))に相当し,これらの断層群はドミノブロック構造を形成していると考えられる.しかし,上述の西傾斜境界の傾きは緩やかで,日本海拡大時に形成された断層群そのものに対応づけることは難しいと思われる.我々は,この西傾斜境界を含む浅部構造は,測線周辺域の複雑な断層帯の複合構造であると考える.測線の北側には東南東-西北西方向の走向を持つ加護坊山断層が存在する.この断層の深部延長部が上述のドミノ構造と交錯している可能性が高い.上述の数kmの厚さの低角西傾斜構造は,ドミノ構造底部及びドミノ構造を切る加護坊山断層によって複合的に形成されたと解釈される(Fig.1(b)).また,Matsubara et al. (2022)のtomography解析によれば,測線東部下部地殻(深さ20-30 km)のVpが6.8~7.2 km/s,Vp/Vsが1.75~1.85と求められており,やはりこの領域における日本海拡大期の影響(玄武岩質岩体貫入)を強く示唆する.
本測線における構造は,極めて複雑な地殻最前部構造とともに,その西部は反射体の乏しく深い地震活動(<~20 km),中部は反射的中部・下部地殻を示すとともに浅い地震活動(<~10km)と低周波地震が特徴で,それぞれ日本海拡大期の中絶リフト,島弧火成活動に支配されていると考える.測線東部は,上述の顕著な西傾斜構造境界と深さ15km以浅の地震活動が特徴づけられる.大崎平野の形成には日本海拡大期の正断層運動が大きな役割を果たしたと推定されてきた.我々のモデルは大崎平野下に西傾斜正断層の存在を強く示唆し,この推定を裏付けるものである.北上低地帯の日本海拡大時の正断層は、その後の反転運動によって震源断層として挙動している例が多く,我々の結果は震源断層マッピングの観点からも重要である.

